« 第16回 勇者になりたかった | トップページ | 第18回 シンボルが変わるとき »

第17回 グッドショーへの道

最近、いろんな喫茶店を利用している。仕事が終わったあと、喫茶店にパソコンを持ち込んで書き物などをしているのだ。家へ帰ると、ついお酒を飲んでしまい、集中力は消えて書き物なんて、したくなくなってしまうのだ(だから、サイトの更新もなかなか進まないんだな)
コーヒースタンドといったほうがいいのだろうか。いろんなフランチャイズのおしゃれな店が多くなっている。コーヒーだけではなく、簡単なおつまみやお酒がでるところもあり、その誘惑についつい負けてしまいそうになる。でも、ここで飲んだら、ここに来る意味ないじゃん、とあまり好きではないコーヒーなどを頼んで長居してパソコンと向かい合っている。
この前、私の隣に座った女の子二人が延々と飲み会での男の不手際について語り合っていて、その話がおもしろく、ついパソコンを打つ手を止めて聞き入っていたときのことである。
何かが割れる音がした。視線を上げると、金髪の青年が床にかがんで、あわてて周囲に飛び散ったグラスの破片を拾い集めている姿が見えた。ビールの入ったグラスを誤って落としてしまったらしい。店員があわてて飛んできた。

さて、ここで問題です(長い前フリだったな)。
あなたが店員なら、このあと、どう対処しますか?

ちなみにその店員の対応はこうでした。

飛んできたかと思うと、ホウキとチリトリをもって、客と一種にグラスの破片を拾い始めた。
周囲の客が言う。
「そんなの手でつかんだら、あぶないよ。そのままにしといたら」
でも、青年は破片を集め続けた。店員は客にいわれて気づき、「そのままでいいですよ」といったが、小声だったこともあり、客は止めない。
店員はこのとき、何かに気づき、一度戻ると、周囲の客に「大丈夫ですか」といいながら、使い捨てのお手拭を配り始めた。その様子に気づいた青年は、周囲の客に「すいません」と謝りはじめた。そして、また破片を拾おうとする。周囲の客はふたたび「もういいから」「あぶないから」といい、店員も「だいじょうぶですから」と大きな声で言った。青年は頭を一度下げると、仲間のいるテーブルに戻っていった。
店員はやれやれ、といった感じでホウキとチリトリをもち、緩慢に破片を掃きとると、モップで床を拭いた。

……さて、あなたなら、どうしますか?

キャスト的な対応ならこうだろう。

まずは駆け寄って落とした客が怪我をしていたり、服が汚れていないかを確認する。それから、周囲の客を心配する。今回は実害がなかったので落とした客には、あとはこちらでやるからといい、席に戻ってもらう。
そして、ポイントとして、ほかの店員に、代わりの新しいビールを届けるように言って、清掃に入る、というところだろう。
キャストの行動規範として一番大切なのは「安全」である。だから今回の状況も確認するのは客の安全なのだ。
では、どうして新しいビールを出すのか。
グラスを落として割った客は「悪いことしたなぁ」と思っているだろう。もったいないことをしたなぁ、と思っているかもしれない。テーマパーク的にいえば、「ビールを売る」というショーを提供して、楽しんでもらおうとしているのだから、本人の不注意とはいえ、そんな陰惨な気分になってもらうのは、本来の目的からすれば、よい状態ではないのだ。新しいビールを出すことで、客がいい気分に戻ってくれるのなら、グッドショーなのである。

キャスト的な対応、ではなくても、一番最初に心配するのは客のことなのではないか。そして、「お代わりを出す」という、ちょっとした心配りくらい、気の利いた人なら思いつくだろう。こういう気配りで客は満足するのだ。また、まわりの人も「いい店だね」と思うはずだ。それは顧客満足につながり、リピートにつながるのだと思う。
今回見た店員は、グラスを落とした客や周囲の客に心配させてしまった。これは、キャストのような対応うんぬんに関係なく、間違った対応だったと私は思う。
ディズニーでは、ゲストを満足させたり、すばらしい対応ができたことを「グッドショー」という。マニュアルになくても、小さな気配り、心配りがグッドショーにつながるのだ。

……いくら、建物の造りを凝っても、おしゃれなメニューを用意しても、店員の見た目がよくても、こういったとっさの対応で、その店の本来の姿がむき出しになる。コーヒーの入れ方や食器の片付け方などは、どの店員も同じ動作で処理している。そのあたりのマニュアルは完璧なのだろうが、マニュアルにはない出来事には対応できないということか。

同じ「マニュアル社会」なのに、ディズニーにあって、他にないものはなんなのだろうか。あらためて、考えさせられる出来事だった。
……店員のホウキとチリトリの使い方が気に入らなかったから、こんな文章を書いたのではない。けっして。

|

« 第16回 勇者になりたかった | トップページ | 第18回 シンボルが変わるとき »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/33048/10211721

この記事へのトラックバック一覧です: 第17回 グッドショーへの道:

» TDRの影を踏んで: 第17回 グッドショーへの道 [TDR三昧]
リンク: TDRの影を踏んで: 第17回 グッドショーへの道. ……いくら、建物 [続きを読む]

受信: 2007.11.09 11:00

« 第16回 勇者になりたかった | トップページ | 第18回 シンボルが変わるとき »