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「TDRの影を踏んで」は、「すいーぱーのホームページ」というサイトの一部のコーナーです。
そのため、ここの更新はかなり不定期ですし、最近はサイト自体の更新も「たまに」となっています。

頻繁にこちらを訪れる皆様には、そのあたりをご理解いただき、ブログの更新を気長にお待ちいただくか、サイトの方にまずは足をお運びいただければと存じます。

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第44回 論文「東京ディズニーリゾートのホスピタリティに関する一考察」

東京ディズニーリゾートに関する論文を執筆した。今回はその第一章について掲載する。

「東京ディズニーリゾートのホスピタリティに関する一考察」

第1章 はじめに

東京ディズニーリゾート(以下、TDRとする)は、どこへ向かうのか。これは、長きにわたってサービス業界の内に根を張ったように動かない問いである。日本の景気は低迷し続け、人口も減少に向かいつつある中、TDRはテーマパーク業界、いや娯楽業界の中で圧倒的な強さを見せている。しかし、それがいつまでも続かないことは運営会社であるオリエンタルランド(以下、OLCとする)自身も理解していることではなかろうか。

こうした状況に対して、OLCが何も方策を実施していないわけではない。45歳以上へのアプローチ、キャンパスデーパスポートなどの若い世代への訴求強化など既存の顧客の取り込み強化に動いている。経営的な視点でいえばキャッシュフロー経営を掲げて、重厚なキャッシュフローによる幅広い選択肢を持つことによって経営基盤強化とさらなる投資の原資を確保しようとしている。リピーターの確保と継続的な投資は避けては通れない行為なのである。

では、テーマパークでもっとも重要なものは何だろうか。施設設備であろうか。キャラクターであろうか。それとも、さまざまなエンターテイメントであろうか。もちろんそれらは前提としては重要だろう。しかし、施設設備に力を入れていた長崎ハウステンボス、キャラクターがそろったサンリオピューロランド、エンターテイメント豊かなユニバーサルスタジオ・ジャパンは成功例といえるのだろうか。

昨今出版されているOLC元社員によるディズニー系統の本では、TDRの一番の強みは「従業員(以下、キャストとする)」であり、彼らが提供するホスピタリティであることを強調している。しかし、彼らの多くは経験をもとに述べているだけであり、科学的実証が行われたわけではない。そもそも、キャストの対応がよいというだけで、年間2500万人以上の人が一つのテーマパークを訪れるのだろうか。第一、経験も人間性も違うキャストが全員同じレベルのサービス、ホスピタリティを提供できるはずはなく、全員が本に記されているような対応ができるはずもない。それでも、TDRが提供するホスピタリティによって毎年多くの顧客をリピートさせているとしたら、他のテーマパークとは違う対応がなされているとという仮説を立てることができる。

本研究では、TDRにおけるホスピタリティの特徴を明らかにし、入場者数や売り上げとの相関関係を考察するものである。あわせて、テーマパーク全体における提供すべきホスピタリティを特定することを目的とする。

第2章では、TDRをはじめとするテーマパークの経営環境を概観し、テーマパークの構成要員を検討するとともにその人材管理手法、組織的特徴を明らかにする。第3章では、テーマパークの先行研究からTDRの現状と比較し、、とくに福島文二郎氏の著述をフレームワークにホスピタリティのあり方に関する議論を検討する。また、テーマパークにおけるホスピタリティとは何かを定義していく。第4章ではTDRの集客や売り上げに影響を与えているホスピタリティの仮説を提示し、事例調査とその結果を述べる。さらに、第5章では調査結果に基づいてTDRのホスピタリティを分析し、第6章では、結論としてTDRのホスピタリティから見るテーマパークに必要なホスピタリティと今後の課題を述べる。

……もうおわかりだと思いますが、4月1日に記述したものなので、当然こんな論文は存在いたしません。この「はじめに」もそれらしくは書いてありますが、構成からしてでたらめなので参考とかにしないでね。

本当はTDRに関する論文を書きたかったのですが、諸般の事情で断念いたしました。それについてはまた今度。

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第43回 あなたの笑顔にお会いするために

東北地方太平洋沖地震では、東北地方を中心に大変な被害となっている。一方で、その被害はまだ確定しておらず、日々被害が明らかになっている。今の時点で書こうかどうか迷ったが、このサイトの主題であり、根本である場所が閉鎖されており、逆に今書かなければ、いつ書くのだ、と思ったので、書き記します。

東京ディズニーリゾートは、東北地方太平洋沖地震の影響のほか、計画停電に伴い電力供給が安定しないなどの外部環境もあり、地震のあった翌日から無期限の休園となってしまった。
当初はパーク内の被害も軽微であり、3月21日をめどに再開を模索していたようだが、計画停電に伴い舞浜地区も停電するようになったことや交通機関が乱れていること、そして何よりも浦安市内の被害が思った以上に大きかったことが要因だろう。

地震によって駐車場や舞浜駅周辺、本社やパーク周辺の道路などが液状化現象によって泥だらけになったり、地割れや段差発生などがあった。パーク内でそういった被害がなかったのが意外なほどである。

舞浜地区の液状化は以前から懸念されていたことであった。地盤沈下は開園当初からあちこちで確認されていたことである。詳細は資料を提示できないので書けないが、何回かマスコミでも報道されたはずだ。パーク内でも開園から10年程度は水回りなどでいろいろと苦労もあったと記憶している。
これまでも震度4程度の地震でも、パーク内の施設に亀裂が走ったり、一部水飲み場やトイレなどの水回りに異常が発生したり、お城てっぺんのアンテナが曲がることもあった(あれは台風のせいだったかな)
埋立地に作られたため、ある程度のことは当然想定されているだろう。以前に行われたシンデレラ城の大改修も地震対策であったという話もある。
パークのある部分はもともと浅瀬の中の陸地の部分だったという説もあるが、公式発表によると、徹底的な土壌改良の結果だという(でもそれだと、なぜ駐車場やパーク周辺はは液状化したのだろう)

それはともかく、キャストにはトレーニングの中で、地震などの災害時にどのような対応をするのか、というトレーニングは行われている。ただ、私が働いていたときは基本的には入社時だけなので、自分が働いていたときに地震があったらどうなっていただろうか。(昨今では年に何度も訓練をしていたそうだ。)
私のころは、最悪の場合は、ゲストを園外に避難させる計画になっていた。バックステージも使って、速やかに園外に避難させることになっていたが、今回の対応はパーク内にゲストに待機していただく対応にしたようだ。
ただ、安全が確認できていないため、建物の外にいてもらったようだ。
電車も動かないため、長時間の屋外待機……途中で屋内に入ってもらったようだが、春休みの時期でもあり、平日にも関わらず、多くの人が結局は帰れず、パーク内で一晩明かすことになってしまった。
対応を聞くかぎりでは、想定外だった部分もあるかもしれないが、フロントラインのキャストががんばったのは間違いない。内心では不安もあっただろうし、家族の安否が確認できない状況だっただろう。それでも的確に対応したのは、やはり「キャスト」として演じている部分が大きかったかもしれない。多くは災害対応のマニュアルなど頭になかったはずだが、キャストという立場で何ができるのか、ということで、対応したのだと思う。そういう意味では、ディズニーのキャスト教育が有効に機能したといえるだろう。
本来であれば渡してはいけないはずの「ゴミ袋」や段ボール箱を寒さしのぎに渡したのも、「SCSE」のうちの安全を優先した結果だ。
ネットで公開されている映像でも、地面に座り込んで途方に暮れるゲストに対して「何か困ったことがありましたらお申し出ください」といい続けるキャストの声も聞こえた。
売り物のお菓子を放出したり、火が使えない中、現在ある材料で炊き出しをしていたのは、マニュアルの範囲だが、それでも園内に留まるしかないゲストにとっては、ありがたいことだっただろう。
細かいところでは小競り合いやクレームなどもあったみたいだが、全体としては混乱なく、安全にゲスト対応ができたといえる。

今回パーク内の施設損傷は軽微であるという運営会社からの発表がある。その日には多くのゲストがいたにも関わらず、被害に関する話がほとんど出てきていないところを見ると、間違いないことだろう。
しかし、今回は直下型、あるいは東京圏を中心とした地震ではなかったために、この程度の被害で済んだともいえる。
開園当初からずっと危惧され、論議され、準備もしてきたことが、今、現実になったのだ。それも、想定していた直下型地震ではないことによって……あえていえば、想定よりもずっと小規模な、遠い場所の地震によって、危惧していた帰宅難民が大量に発生し、施設は一部傷つき、ライフラインが破損した。そして想定してしなかった電力の長期的な供給不安定まで発生してしまった。自然災害等による長期の閉園も想定しているはずだが、運営会社は現状をどのように乗り切ろうとしているのだろう。

運営会社側は否定しているが、4月上旬にはパークの運営を再開するという一部報道もある。2万人近くのアルバイトは一部給与保証がされるともいわれているが、とくに専業で働いている方にとっては死活問題である。パーク関連の企業にとっても経済的損失は大きく、旅行業界も困っているという。
運営会社自身も、以前のような地震債券は発行していないが、金融機関との間で特殊な契約を結んで、必要に応じて速やかな融資が行われることになっているが、舞浜集中型の経営なので、長期休業はやはり苦しいはずである。
利害関係者、そしてパークを愛する多くの人が東京ディズニーリゾートの再開を望んでいるのは間違いない。

ただ、パークがある浦安市内は液状化で大きな被害があった。上下水道に大きな被害があり、今でも大変な思いをしている方々が多い。とくに、パーク周辺の住宅街がそういった状態である。

震災の被害、原発の問題、計画節電、そしてパークのある地元の被害……そういった外部環境の中で、パークの運営を再開して、「非現実」を作り出すことができるのだろうか。
非現実を作り出すことができなければ、そこはもう、夢と魔法の王国でも、冒険とイマジネーションの海でもない。単なる娯楽施設である。

あなたの笑顔にお会いするために
東京ディズニーリゾートは
ただ今お休みをいただき、
皆様をお迎えする準備を進めております

とても素晴らしい、前向きなコピーだと思う。
運営側の論理だけではなく、笑顔で遊びに行ける人たちによって、テーマパークが成り立っているのだということを運営会社も理解しているのだと思いたい。

地震当日対応されたキャストのみなさま、お疲れ様でした。

そして、今回の震災で被害にあわれた皆様にお見舞い申し上げると同時に、亡くなられた方々に心から哀悼の意を表します。
今回の震災で被災された皆様、笑顔で東京ディズニーリゾートへ遊びに行けるときがまた近いうちにくることを私は信じています。

追記:2011年4月15日に東京ディズニーランドが再開しました。そして2011年度は2534万7000人(前年同期比1万9000人減)。下半期は過去最高だったそうな。株価もうなぎ昇り。すごいですね。

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第42回 マニュアルと人の想いとの間に

遊園地でまた大きな事故が起きてしまった。東京ドームシティの死亡事故のことである。
以前、「マニュアルどおりの行動は」で書いたことと、ほぼあてはまるような事故であった。
以前にだいたい言いたいことは書いたので、最初は書く予定がなかったのだが、あるコラムを読んで、なんとなく主張しないといけないような気がしたので、続編のような形で書く。

あるコラムとは、

このままでは日本から遊園地がなくなってしまう!?
事故は社員でなく、アルバイトだから起きたのか

である。
コラム全体を読めば、なんで社員にさせないのか、といっているのではなく、マニュアルを整備して仕組みをつくるだけではだめで、安全に対する人の想いが重要なんだけれども、その思いはぶれることもあるから、しっかりとした仕組みの中で安全に対する意識を高めなければいけない、という趣旨だ。それは問題ない。賛成である。

気になったのは、ここだ。

「ちなみにテーマパーク(遊園地)単独では、毎年ダントツ日本一を記録する東京ディズニーリゾート(ディズニーランド、ディズニーシー合算)の年間入園者数は、2581万人(同)だ。同社を運営しているオリエンタルランドは、昨年までキャストと呼ばれるアルバイト数をホームページ上で公開していたが、約2万人いる従業員の約9割が高校生や大学生を中心としたアルバイトだ。つまり私たちがディズニーランドに行って接する人たちの10人に9人はアルバイトということになる。
 むしろ、アルバイトを雇わなければ運営も運行もできないのが遊園地の実態ではないのだろうか」

たしかに今のパークで正社員はほとんどいない。末端のキャストを指揮監督している人もほとんどはベテランアルバイトかテーマパーク社員と呼ばれる契約社員だ。
しかし、アルバイトを雇わなければ運営も運行もできないのではなく、アルバイトだけで運営することを想定して、ディズニーのテーマパークは作られているのだ。
いや、アルバイトや正社員などの雇用形態に関係なく、運営する、といった方がいいだろう。それが、あのコラムでいうところの「仕組み」だ。常に現場での実際の手順と一致させたうえで、最適化を目指しているマニュアルの運営。そのマニュアルに基づいた研修。そしてマニュアルの改善……その仕組みはとてもすばらしい。暗黙知を形式知に常に置き換えていく仕組みといってもいいだろう(詳しくはまたいずれ)

一方で、TDRといえども事故は起こる。その原因のほとんどはマニュアルどおりに作業をしていなかった場合である。そこがあのコラムでいう「人の想い」だ。モラルといってもいいだろう。TDRでは常にSCSEという行動指針を確認し、とくに安全がどうして大切なのかをいろいろな場面、あるいは仕組みの中で確認し考える機会が用意されている。
遊園地やテーマパークはどこでも「安全」が前提だ。だからこそ絶叫マシーンにも安心して乗れるし、武器を振り回す人たちを間近で見ても、無事にいられる。そうして「非日常」が形成される。「安全」はすべての前提なのだ。
それだけ重要な「安全」なのに、事故が起きる。安全に対する絶対的な神話があるディズニーのテーマパークでも事故は起こる。それも原因のほとんどは「人」。
それだけ「人の想い」というのは難しい領域なのだ。

さて、冒頭の話に戻ろう。

「事故は社員でなく、アルバイトだから起きたのか」という命題は、どの会社でも突き詰めることができるものである。

あるアパレル販売店では、あえて店員をすべて正社員にしたという。理由は、長い期間働くことが前提であるひとは、それだけ経験も積むし、改善をしていこうというモチベーションにもつながる。職場に貢献したいという想いも作られる。そういった人が接客したほうがよい結果が生まれる、という考え方からだという。

一方で、あるテーマパークでは、長期で働いているアルバイトのモチベーション低下に悩んでいるという。学生アルバイトなどは「夢がかなう場所」だとか、「パピネスへの道」だとか、フィロソフィーを真剣に受け止めて実践しようとする人は多いが、長く働いていると「毎日が初演」という言葉もむなしく、惰性で働く人も多くなってくるのだという。そういったアルバイトの人たちをどうするか(いろんな意味で)が課題らしい。

正社員や契約社員か、アルバイトかの問題ではない。
それは、たしかにそうだと思う。しかし「人の想い」という面からすると、どうなのだろうか。
アルバイトにどれだけ権限や責任があるのか。それをどれだけ認識させているのか。正社員であれば、意識が高いのか。長く働いている人は本当に経験豊富でマニュアルを把握して働いているのか。いずれ辞めることがわかっている有期採用だと、モラルは低くなるのか。正社員には責任はあるが、アルバイトは責任を感じなくてもよいのか。
……原因はそこではない。しかし、本当にまったく関係ないことなのか。

今回の事件とコラムを通じて、人材育成の重要さと困難さを改めて感じた。
もう一つはアルバイトという雇用形態の理不尽さ。学生は一時期の稼ぎと社会勉強のためには必要な仕組みだし、諸般の事情でフルタイムとして働けない人もいるだろう。でも、そうではなく、しかたのない事情でアルバイトとして働いている人もたくさんいるのだ。とくに遊園地やテーマパークでは。その人たちは「アルバイトを雇わなければ運営も運行もできないのが遊園地の実態」といわれて、どう思うのだろうか。
……でも、そんなことを表には出さずに、オンステージでは笑顔で、常に安全に気を配る「毎日が初演」のキャストが働く場所、それが東京ディズニーリゾートなのである。
今後もそうあり続けてほしいし、ほかの遊園地やテーマパークもそうであってほしい。ディズニーを模倣するなら、その部分を真似してほしいものだ。

※あのコラムには、「カストーディアルの持つチリトリの形状は、万が一ゲストに当たってもケガをしないように設計されているそうだ」って書いてありましたが、それは間違いです。厳密にいうと、ゲストにぶつからないように、狭い範囲で使用でき、なおかつキャストの体に密着させることができる造りになっている、ということです。どちらかということ、ほんとはこの記述のほうが気になったのだ。あのチリトリはそういう意味では単なるチリトリであるが、人の思いが安全につながるような形の製品を採用している、ということですな。

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第41回 帰れない場所 居られる場所

私が東京ディズニーランドのキャストを辞めてから、かなりの時間が経っている。(どれくらい経っているかはほかの記述から想像してください。少なくとも朱色のトイブルームは握っていました)

『故郷は遠くにありて想うもの』と石川啄木が詠うように、私にとっては、ある意味、東京ディズニーランドは故郷のような存在になってしまった。遊びには行けても、けっして帰ることができない場所……。
学生時代、キャストをしていた人のほとんどが思う感慨だ。

一方で、いろいろな事情、あるいは想いで、ずっと働いているという人もいる。今も働いている。東京ディズニーランド開園以来、準社員(アルバイト)として働き続けている人もいるはずだ。

この前、Aさん(仮にそうします)の勤続●●周年記念のパーティーを開くとの連絡があった。その人は専業で週5日、働いている人だ。一般的には「フリーター」に分類されてしまうのかもしれないが、勤続は長いし、準社員としては一番高い階級にいるので、時給はかなり高い。アルバイトとはいえ、各種保険も完備されているし、年金もきちんとひかれている。もしかしたら、そのへんの正社員や派遣社員よりも月給はもらっているかもしれない。
とてもよい人だし、仕事もできる。私がアルバイトしていたころにはキャストの中で指導的な立場にあった。その当時、話を聞いた限りではずっと働くつもりはない主旨のことを言っていた。いや、今もそうで「次の記念パーティーはないから」とおっしゃったと聞いている。
やはり、いろんな想いがあるのだろう。
結局、私は参加しなかった。会って、なんといえばよいのだろうか。

「おめでとう」

これが正しい声掛けなのだろうか。私のように、学生時代さらっと働いてほかで正規雇用の形で働いている人間にそう言われれ、Aさんはどう思うのだろうか。

Aさんのような人は、たくさんいるはずだ。
もちろん、いろんな事情があり想いがあって、キャストとして、アルバイトのまま働いているのはわかっている。私とほぼ同期にキャストになって、今もまだ第一線のスイーパーとして働いている人もいる。彼の実力があれば、ワーキングリードにもなれるはずなのに、スイーパーであり続けたいという思いで働いているのだ(もちろん、いろいろあるんですが)

いろんな事情や想いがあろうとも、これだけははっきりしている。パークが好きなのだ。仕事が好きなのだ。もっと条件の良いアルバイト、あるいは正社員としての雇用もあるかもしれない。あるかもしれない、と思いつつ、それでも、働いているのだ。

アメリカのパークでは、パートタイム(アルバイト)でキャストから始まって、フルタイム(正規雇用)になり、パーク運営の中心になったり、あるいは幹部となる人がたくさんいる。日本でも、準社員から契約社員、正社員になる制度が最近できたわけだが、それは超難関だ。契約社員にいたっては、契約更新に制限があり、ある程度の年数以上は更新できない。それなら、準社員として働いていたほうがまだよいのだ(同じ有期契約だが、ずっと更新されているので、簡単には契約を切ることができない、はずだから)。

こうした状況に対して運営会社は株主総会の中で「労働環境の違い」と説明した。
将来的にはともかく、今はまだ、アルバイトはアルバイトのまま働き続け、契約社員は働き続けることができるのか、あるいは契約切れになる前に正社員になれるかどうかを不安に思いながら働き続けることになるのだろう。それこそ、日本の労働環境が変わらないかぎりは。

一方で最近は、わりと「年上」のキャストを見かけるようになった。一時期、準社員雇用に年齢制限があったような気がするけれど、ああ、気のせいですね(失言)

……えっと、それはともかく、Aさんみたいな立場の人が、自信を持って働けるような労働環境の社会……というと大きすぎるので、パークであればよいと思う。もちろん、キャストとして働いているときは、そんな様子を微塵も見せない。新人もベテランも超ベテランもみんな同じキャストだ。それが建前やオンステージだけではなく、バックステージや外でもそうあればいいと思う。
それは制度だけではなく、受け止め方なのだ。

「おめでとう」

今は、がんばれといえる立場じゃないかもしれないけれど、これからも元気で悔いのない限り働けよ。
声はきっとかけられないが、そう思っている。

※今回は一部フィクションがまじっています。特定の方を想定したものではないので「わたしのことを書いたな」と思わないでくださいね。よろしくお願いします。

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第40回 不祥事続き?でも業績を伸ばす企業の秘訣は?

現在、私は大学院に通っていまして、そこで使った発表をちょっと加工して今回は書きます。

企業の不祥事は業績の悪化だけではなく、存立そのものを脅かすことになる。アミューズメント業界だけを見れば、たとえばジェットコースターの死亡事故が起きた大阪の某遊園地は結局営業再開できずに消えてしまった。あるいは同じく大阪の某テーマパークは度重なった不祥事の為に入場者が長期にわたって低迷し、立て直すのに大変苦労をした。

企業が不祥事を起こす要因、問題が頻発する要因は個々の企業、ケースによって違う部分もあるが、共通していることもある。それが、企業のフィロソフィー、企業理念がないところ、あるいは形式的なものを掲げているだけで、社員に浸透させ、あるいは経営陣が自戒し、利害関係者、顧客に対して行動で示していないところである。
(大阪の某テーマパークは今、ちゃんと掲げています)
http://www.usj.co.jp/recruit/human/index.html

しっかりとした企業理念、哲学がある企業は、それを浸透し、実践するためにさまざまな仕組みを作り、社員に問いかけ、掲げたことに沿った企業活動をしようとする。だからこそ、不祥事や人為的なトラブルとは無縁でいられるのだ。

しかし、しっかりとした理念、哲学があるにもかかわらず、度重なる不祥事、あるいは問題が発生したのに、ほとんど業績に影響を受けなかった企業がある。

それが、東京ディズニーリゾートの運営会社である。

過去3年間の不祥事・問題だけでも、以下の通りである。

2007年 1月18日 料理に賞味期限切れチーズ使用(翌日発表)
2007年 1月26日 賞味期限を超過したチョコレートを使用した商品販売(内部調査結果)
2007年 2月 9日 予約システムの不具合修理の延長に伴う受付中止(~8月まで)
2007年 3月12日 商品(食品)にプラスチック片が混入(工場検査で発覚)
2007年 5月22日 料理に賞味期限が切れた油を使用(2日後発表)
2007年12月 9日 変電所配線ミスにより26のアトラクション停止
2008年 1月 3日 アトラクションで火災発生
2008年 1月 8日 パレード中にフロートから装飾物が落下(300kg)
2008年 4月21日 賞味期限が切れた赤ちゃん用麦茶を販売
2008年11月12日 料理に賞味期限が切れた鴨肉を使用
2009年 8月 1日 法人税更正処分等取消請求訴訟敗訴、控訴へ
2010年 1月 7日 商品(食品)の賞味期限誤表示にともなう回収

……では、この間、この運営会社の業績はどうだっただろうか。

売上高(百万円)
 07/3 \344,082
 08/3 \342,421
 09/3 \389,242
 10/3 \371,414
営業利益(百万円)
 07/03 \34,110
 08/03 \31,144
 09/03 \40,096
 10/03 \41,924
経常利益(百万円)
 07/03 \30,187
 08/03 \27,510
 09/03 \38,824
 10/03 \40,758
当期純利益(百万円)
 07/03 \16,309
 08/03 \14,730
 09/03 \18,089
 10/03 \25,427

年間入場者数
 07/03 2,581.6万人
 08/03 2,542.4万人
 09/03 2,722.1万人
 10/03 2,581.8万人

さて、どうでしょう。相変わらず利益率は低いのですが、それでも、事件の影響をさほど受けていないのが読み取れるだろう。
(ここを見ている人に説明する必要はないだろうが、09/03の数字がどれも高いのは25周年だったからです)

では、なぜ影響を受けていないのだろうか。
私の分析では以下のとおりである。

  1. 自分は大丈夫だとほとんどのゲストは思ってしまう(もともとしっかりしているので、イレギュラーだと思う、ということだ。たとえば食品会社で同じような事件が起きて急に売上が減るのは「ほかも、そうかも」と思われるからである)
  2. 「OLC」と「TDR」をイコールだとは思っておらず、報道されても気づかない人が多い(というか…)
  3. あまり大きく報道されない(なぞ)

パレードの事故や法人税更正処分の話、あと、その判決文にあったマスコミ関係のお話はいろいろと興味深いのだが、ここではあえて足を踏み入れない。
それはともかく、上記のような理由で、業績に影響はなかったのだ。ある意味、信用力のとても高い企業、ブランドだといえるだろう。

さて、テーマパークの運営会社は企業理念として、以下のものを掲げている。

http://www.olc.co.jp/company/philosophy/

しかし、みなさんも知っているとおり、ここは企業理念とはべつに、ディズニーの理念、「ディズニー・フィロソフィー」が並列して存在している。
いろいろと調べてみたのだが、「ディズニー・フィロソフィー」として成文化されたものはないようだ。ウォルト・ディズニーのが遺した言葉などを使って、さまざまな具体例などを組み合わせて、観念的に伝えているもの、といえるのだろうか。

あえていうと、こんな感じなのだろうか(あえて略)

あとは、キャストの行動指針「SCSE」もそれにあたるだろう。

そう、ディズニーはしっかりとした理念があり、従業員の指針がある。従業員の指針の一番最初は「安全safety」である。「SCSE」の言葉とその意味は、あのパークで働いている人は、外部の人も含めて必ず知っている言葉である(うそだと思うなら、誰にでもいいから聞いてみてね)

それなのに、安全にかかわるような問題が起きたのはなぜなのか。

結局はシステムではなく、人なのである。

東京ディズニーリゾートはマニュアルが完備されていることで知られている。マニュアルどおりであれば、上記のような問題はほぼ100%の確率で起きないのだ。
マニュアルの話については、いつかそのうち、ということにしても、いくらマニュアルがそろっていても、研修制度がしっかりしていたとしても、人がかかわる仕事はすべて、最後はすべて人なのである、ということだろう。

ウォルト・ディズニーはこういっている。

「世界中でもっともすばらしい場所を夢見て、想像することはできる。設計し、建設することもできるだろう。しかし、その夢を実現するのは人である」

結局そういうことなのだ。

※運営会社の不祥事として挙げたものは、オフィシャルに公開しているものである。また、これは過去のものであり、それに対する対策はきちんとなされている、ということになっているというのは付け加えておく。

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第39回 極秘アトラクション計画発覚?

東京ディズニーランド、東京ディズニーシーの新アトラクション情報が公になっているが、それとはまったく違う情報を入手した。

東京ディズニーシーのロストリバーデルタにあるインディージョーンズの冒険の横に不自然なほど広い「空き地」があるのをご存じか。
実はここに、あるアトラクションが計画されている。
それが、ライオンキング「シンバズ・プライド」だ。

これはもちろん、公には発表されていない、アンオフィシャルな情報である。今回、イメージボードと模型の画像を入手することができたので、ここに大々的に公開する。

これだ。

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見ての通り、ライオンキングの世界を体験するアトラクションである。世界のディズニーパークに先駆けて、東京ディズニーシーにオープンするのだ。

……と、この記事の日付をみていただければわかるというか、勘の良い方ならもうお気づきだろう。

実はここに掲載した画像に映る模型やイメージボードは、東京・水道橋にあるとある美術系の専門学校の学生の卒業制作作品だったのだ。卒業作品展が開催されたとき、ちゃんと許可を取って撮影したものである。
見ての通り「最優秀作品」であると表彰されており、よくできたものだ。

しかしである。
ディズニーのテーマパークでは、アトラクションやお店などの建物は通常の建築物の作り方とはまったく異なる手法がとられる。

  • 最初にデザイナーがイメージを描く。ここにあるリアルなボードではなく、アニメの背景のような、絵だ。
  • それをもとに模型を作る。作る人はデザイナーなので、建築学的な配慮は一切ない。
  • その模型をもとに、建築士が模型どおりに設計図を起こす。

まあ、建築学的に考えたら、あり得ない手法でディズニーのアトラクションは作られるわけだ。一番大変なのは設計図を書く建築士でしょうし、効率という面から考えても本来ならありえない。しかし、それをやるのがディズニーであり、ほかのテーマパークと違う理由なのである。

その点からみると、今回掲載した作品は、一般的なアプローチから作られたものであり、リアリティはあっても、ディズニー独特の雰囲気がない理由はそこにあるのだろう。

ウォルト・ディズニーはこう言っている。

「世界中でもっともすばらしい場所を夢見て、想像することはできる。設計し、建設することもできるだろう。しかし、その夢を実現するのは人である」

この作品を作った人も、すてきな夢を実現してほしいものである。

※作者名とか載せたいのは山々だが、実はわからないのです。もしご本人から連絡があれば、ちゃんと載せますけど。

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第38回 あそこはテーマパークなのか

たまには、他のテーマパークの話題です。

長崎ハウステンボスを巡って、何やら騒がしい。今のところは、旅行会社が支援先となって、しばらく存続する方向のようである。

今、これを読んでいる人の中で、長崎ハウステンボスへ行ったことがある人はどれくらいいるだろうか。私は一度だけ行ったことがある。
長崎空港から船に乗って、直接ハウステンボスへ向かった。一時間ほどの船旅だっただろうか。ハウステンボスの港に降り立った時は、本当に異国へ来たかのような錯覚を一瞬だけ感じた。ただ、よく見ると、日本の観光地のような看板だとかが目につき、すぐにここは日本であることを思い知らされた。
「ハウステンボスの挑戦」に記された、壮大な計画は外観だけが残っているだけだったの。

この場所は、ハウステンボスの運営会社も、一般的にも「テーマパーク」だと云われているが、行ってみたらわかる。そこは「町」なのだ。
建物にしても、設備……とくに下水処理システムなど、他にはないような先端的な取り組みをしている。
建物も町並みもヨーロッパ風にデザインも統一されていて、歩いているだけで楽しい。

そう、町なのだ。

これといったアトラクションもなければ、すごいショーも、温泉もない。何か特別な食べ物や商品があるのかといえば、最初のころはあったみたいだが、今はオランダ料理のお店もない。お店に売っているものは、長崎土産など、わざわざハウステンボスに行かなくても買えるようなものばかりである。
町に入るのに、高い入場料を払おうとする人がいるだろうか。いや、一度はいるかもしれないが、誰がリピートするというのだろう。

……といっても、私は雰囲気はきらいではない。しかし、テーマパークを期待して訪れる人の多くはがっかりするだろう。私のまわりにも訪れた人は何人もいるのだが「楽しかった」という人はいなかった。だいたいが長崎観光の一部として半日あるいは一日の宿泊で訪れるようだが、それなら長崎の町や雲仙などへ行った方がずっと楽しいものがあるだろう。

ちなみに、私はハウステンボスで2泊した。ハウステンボスの構造だとか、スタッフの動きだとか、つぶさに観察もした。アトラクションも全部乗ったし、お店も全部のぞいた。
残念ながら、合格点だったのは、ハード面とチーズケーキと運河を巡る遊覧船、あとはホテルの朝食だけだった。あとは全部だめ。
とくにだめだったのが食事だった。高いレストランか、貧相なカフェテリア方式のものしかない。めぼしい食事処も高いか、まずいかのどちらかで、結局夜は二日とも、今はない、按針という名の和風居酒屋で安い酒と美味しい長崎の海産物をいただいたのだった。っていうかね、ハウステンボスに居酒屋がある時点でおかしい。みやげ物屋にはよくある「スピードくじ」だとか、日本風の変な登りだとかが平気で置いてある。自分たちで雰囲気を壊しているのである。

こんな立派なハードがあるのに、あんたたちは何がしたいの、と経営者が目の前にいたら詰問したくなるような2泊3日だった(テーマパーク好きな私くらいではないか、こんなに長く滞在するのは)

かといって、いまさらオランダ風に戻っても、客が増えることはないだろう。現在は範囲を広げて「ヨーロッパ」をテーマにしているようだが、その雰囲気があるのは建物だけである。
ディズニーとオリエンタルランドが昔、ここの買収を検討するためにハウステンボスを値踏みしたことがあったが、今回も問題となった補修費用や、ディズニーのクオリティに挙げるための改修費用と、立地条件や商圏の設定などに難があり、手を出さなかった。
それは正しい判断と選択だったことが、今になって証明された形だ。

結果的には典型的なテーマパークの失敗例「ハードにお金をかけすぎて、中身がない」場所なのだ。ただ、ほかと違うのは、あまりにも初期投資にお金をかけすぎて(ディズニーランドを作れるくらいの金額)、今さらつぶすことができないだけなのだ。

では、どうすれば、ここはうまくいくのだろうか。いや、テーマパークとしては、もうどうしようもないだろう。場所からしてリピーター確保を前提とした運営はできないからだ。「カジノ」でも作らないかぎり、再生はできないだろうが、それも日本各地にカジノができれば、意味のないことになってしまう。
結局は「町」としてやっていくしかないのではないか。入場料を廃止し、景観維持を条例で定めて、リゾートの町として切り売りする。あとは「町」として、どう維持発展させていくか、ということを考えるしかないでしょう。

でも、本当に雰囲気は素敵な場所です。
長崎へお越しの際には、ぜひお立ち寄りください。

それにしても、東京ディズニーリゾート、キッザニア、ユニバーサルスタジオジャパン、あとは日光江戸村以外に、日本でまともなテーマパークはできないのだろうか。
(ほかにもあるのは知っているけど、あとは、自称っぽいので、抜きました)

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第37回 書き残すべきことは

最近、どうもサイトの更新が遅々として進まない。それほど忙しいわけでもないし、ネタがまったくない、というわけでもないのだが、それはきっと、意欲や気力の問題なのだろうか。

ふと、ネット上を見渡すと、以前に比べるとディズニー系で、見るべきサイトやブログ、掲示板、SNSがすっかり少なくなったような気がする。確かに今もファンサイトみたいなもので活発なものは多々あるのでしょうが、読み物系というか、ウンチク系というか、バックステージ系というか(笑)、そういったものが最近すっかり不活発というか、あんまりないなぁ、という気がする。
それは、私のように気が向かないせいなのか、書くべきことは語りつくされてしまったのか、あるいは書く価値が見出せなくなってしまったのか、どうなのだろう。
一方で、東京ディズニーリゾートのオフィシャルサイトでは、キャストの日常だとか、座談会での演じる以前の部分だとか、あるいは研修のレポートなどで、積極的に「バックステージ」の話を流し始めている。そのうち、アメリカでしか体験できなかったバックステージツアーが東京でも行なわれる日が来るのかもしれない。

そんな私が今注目しているブログがこれ。

スタッフが見つけたちょっといい話

これは、とあるコンサルティング会社のブログである。そんなに掘り下げた内容ではないが、ディズニーの精神を感じることができる文章だ。

JSパートナー スタッフブログ

こちらも、上とは違うコンサルティング会社のブログである。こちらの方は、元社員としての経験が細かく書かれていて、ここまで書いても大丈夫なのか、と心配したくなるが、ついつい読んでしまうものである。

元某テーマパーク運営会社社員でコンサルタント、というと、例のあの本の事件のせいで、胡散臭さがどうしても出てしまうだろうが、上記の人たちはブランドだけに頼らず、しっかりとしたコンサルティング、そして、きちんとした内容を講演できる方々なので、安心して見てみてください。

一方で、その事件の人は、相変わらず、ブログをめったやたらと、攻撃的で意味が不明な文章を掲載し続けているようだ。だいたいが「どこにホスピタリティがあるんや」という文章ばかりで、読むと気がめいってしまうのだが、ここ最近の傾向として、某テーマパーク運営会社に向けた攻撃を始めたのだ。
その内容は「本当に元社員だったの?」というような、信憑性に疑問を感じるものや、一線を越えた記述もあり、今後どうなるのか、ついつい注視したくなる。
(ここでは紹介しませんけどね)

それはともかく、こうして元社員の人たちが書いているものを見ると、単なるバイトであった私がブレーキをかける必要はないのかな、とも思えてくるし、一方で、もう私は書かなくても、もっと知っている人たちが情報発信してくれればいいのかなぁ、とも思える。
ただ、元キャストが書いていることだから、とか、元社員が云っていることだからといって、それが正しいとは限らない。
結局、情報は発信することよりも、どう受け止めるかが大切なのだ。

ただ、それにはやはり情報がなければ始まらない。だから、もっとワクワクするような、あるいは「うーん」と感慨深くなるような、「そうなんだ……」と考え込んでしまうような、魅力的なディズニー(パーク)情報を、みなさんもどんどん発信していきましょう。あるいは、お寄せください。
(ああ、でも、ショーのダンサーがどうだとか、パレードを見るならこことか、隠れなんとかは、どこにあるとか、そんな情報は、私はいりませんので)

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第36回 イベントで季節はわかるのか

いつの間にか、すっかり秋である。紅葉をそろそろ見に行こうかなぁ、と思っていたら、なんと、東京ディズニーリゾートではもうクリスマスイベントが11月10日から開始されるのだという。

そういえば、世間的にも、11月くらいになると、クリスマスの飾りを見かけたりするようになった。しかし、以前は12月に入ってから、そろそろクリスマス、ではなかったか。

クリスマスが早まったのはなぜか……それは東京ディズニーリゾートのせいなのだ。

昔……10周年の前後あたりでは、クリスマスイベントは11月後半からだったはずだ。それ以前は12月に入ってからの開催だった。
とても若い人は別として、思い出してほしい。クリスマスって、いつから意識するイベントでしたか。やっぱり12月でしたよね。
しかし、今は早い。ちなみに、大阪のテーマパークの今年のクリスマスイベントは11月6日である。
なぜ東京ディズニーリゾートがクリスマスを速めたか……理由はもちろん、営業的な理由からだったのだ。
私はイベントのない平和のパークが好きなのだが、世間的にはイベントがないと客足は進まない。
そのためにアニバーサリーイベントを一年間あるいはそれ以上の期間で続けて実施したり、さまざまなイベントをつなげて実施することもした。今でこそ、一年以上前から計画的に実施し、公表もしているが、昔は現場も知らないうちにイベントが始まったこともあった。

 ……それは、ある平日のことだった。そんなに混んでいるわけでもなく、私はカストーディアルキャストとして、優雅にスイーピングをしていた。毎日、こんなにスローだったら、楽だなぁ、と思いながらエリアを歩いていると、突然BGMが途絶え、スピーカーから軽快な音楽が流れ始めた。
 何かと思っていると、多くのゲストが足を止め、遠く、ファンタジーランドの方を見つめていた。私も立ち止まって、ファンタジーランド……パレード出発点を見た。
 そこには、見知らぬパレードのフロートが見えた。こちらに向かって接近しつつある。
 なんだ、あれは……。
 気がつくと、近くに、やはり呆然と立つ社員がいた。私はその人に近づき、聞いた。
「あれはなんですか?」
「……知らない」
 そして、社員はあわてて無線で交信を始めた。

結局このパレードは数日後に始まるイベントのもので、先行スタートということだったのだが、そんなイベントを数日後に実施すること自体、知らされていなかったのだ。社員も知らなかったから当然始業前のミーティングでも話は出ないよな。(余計な話だったかね)

今でこそ、ネットもあるし、社内報や株主通信、いろんなメディアなどでも来年度のイベント予定は出るが、昔はゲストも、そしてキャストもあんまり気にしていなかった、ということか。

それはともかく、スペシャルイベントは、パークを盛り上げる余興のような存在から、今ではパークの売り上げを大きく左右する存在になっているということだ。

東京ディズニーランドは、日本のクリスマスを速めただけではなく、ほかの行事にもさまざまな影響を与えている。

たとえばカウントダウンイベント。昔は大晦日といえば、テレビで紅白を見て、ゆく年くる年でお正月を迎えるのが日本の伝統だった。それが、東京ディズニーランドで 1986年からカウントダウンイベントを始めたころから、徐々に世間でも広まっていったものだ。
これも、今では12月末からカウントダウンパレードのお披露目を毎日実施している(今年もやるのかな)。昔は閑散期だったクリスマスと大みそかの間も、今では多くのゲストが訪れている。

ハロウィンを日本で広めたのも東京ディズニーランドで、1997年から開始している。これも、最初は一日だけの小さなイベントだったのに、今では9月の中旬から10月末までのイベントとなり、やはり多くのゲストを集めてきた。今年からは、東京ディズニーシーでもとうとう開催しなければならないほど(集客の問題ですな)、メジャーなイベントとなっている。

東京ディズニーリゾートはスペシャルイベントによって、集客増の手段としていると同時に、「クリスマス」や「大晦日」に対する日本国民の感覚を変え、「ハロウィン」という新たなイベントを定着させた。それによって、「クリスマス」や「大晦日」「ハロウィン」の時期になると「ディズニーランド」というイメージをつけることにも成功したのではないだろうか。それがまた、集客にもつながっているのだ。
一方で七夕は成功してないし、夏祭りはこれからからかもしれないし、バレンタインは微妙なところだ。このあたりの集客を上げれば……というのは、大きなお世話か。

運営会社の集客戦略として、クリスマスの時期を早めたり、ハロウィンを定着させた上で長い期間実施したことは、大きな成功だろう。
しかし、私はそんなイベントがないころが好きだった。夏休みが終わってから、クリスマスのイベントが始まる11月末くらいまで、装飾もないいつものパークが黄昏に染まり、樹木が紅葉していく姿が好きだった(落ち葉対応はいやだったが)。少しずつクリスマスの装飾の準備が進んでいく姿が好きだった。
それも昔の話である。

多くの人々は、今東京ディズニーランドでどんなイベントが行なわれているのか、新しいアトラクションやショーがあるのか、ということなのだろう。

でも、私は違う。

だが、そう思って遊びに行っても、いつも何かをやっているから、困ったものである。

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第35回 完成してしまったのかもしれない

ディズニーのテーマパークは、永遠に完成しないといわれている。常に変わり続けるという意味らしい。
2009年5月25日、また一つのアトラクションが終了を迎えた。「ミッキーマウスレビュー」である。その最終上映に参加をしてきた。これまでに、最終回を見たものは「キャプテンEO」と「ミート・ザ・ワールド」、そして「ミッキーマウスレビュー」だ。いわゆる最終回マニアではなく、好きだったアトラクションとお別れをするための儀式のようなものだ。

アトラクションが終了するときを迎えるのは、悲しくはあるが、ある意味仕方のないことだ。シアター系は改装で寿命を延ばすことはできないし、そうではないものについても、集客が落ちれば改装や、あるいは全面変更をするのは、経営的にも当然のことであり、新しいものを期待する多くのゲストに応えることでもある。

「キャプテンEO」については、とても好きなアトラクションだったので、最後にもう一度じっくり見たい、と思った日がたまたま最終回の日だった、というだけだった。今のような最終回マニアみたいな人もほとんどおらず、最終回は直前に行ってすんなりと入れた。まわりはほとんど元キャストの方だったような気がする。
このときは「あーあ、これでもう二度と見れないのか」という寂しさと同時に、次はどんなアトラクションができるのかという期待があった。
それは、最終回を見る見ないにかかわらず、消えてしまったアトラクションの多くは、そういうものなのだろう。

しかし、「ミート・ザ・ワールド」が終わると聞いた時は慄然とした。たしかにいつも空いているし、映像は古いし、そのくせ大きな場所を占めていたため、常に新アトラクションの候補地として噂されていた場所だった。
「ミート・ザ・ワールド」が他のアトラクションと違うところは、日本独自の、日本をテーマにした唯一のものであることだった。いうなれば、マジックキングダムのプレジデントハウスという、歴代のアメリカ大統領を紹介するアトラクションのように、「ミート・ザ・ワールド」は日本を謳う”東京”ディズニーランドならではのものだったのだ。

だから、終わるはずがない。「ミート・ザ・ワールド」やガイドツアーのキャストもよく、そういった説明をしていたものだ。
もし終わるとしても、日本らしいものを新たに作るのではないか、「ミート・ザ・ワールド」で謳い上げた日本と世界のつながりを、さらに発展させるものになるのではないか、という妄想に近いことする考えた。
……しかし、このアトラクションはリニューアルされることもなく、ずっと、存在し続けた。それこそ、今書いたことが真実であるかのように、変わることなく存在し続けたのだ。
ところが、ある日突然、終了が発表された。メンテナンスによる休止期間も発表されていたにも関わらず、それは突然のことだった。ほかの消えたアトラクションと違うのは、次のものが決まっていない中、突然終わることになってしまったのだ。

その最終回は、いつもひっそりとした「ミート・ザ・ワールド」には似合わない、混乱した状況だった。押しかけて、どうしても最終回を見たいと集まった人たちのうち、どれだけの人が、このアトラクションを愛していたのだろうか。この人たちのうち、東京ディズニーランドへ来るたびに、このアトラクションを訪れたファンはどれだけいたのだろう。
人混みの中で圧されながら見た「本当の」最終回は、本当に感動的だった。もともとこのアトラクションのストーリーは感動的に作られていたのだ。それをどれだけの人が知っているだろう。最後に壁の中に気球が消えていったときは、本当に最後のような、物悲しさが会場の中に満ち満ちていた。
結局、最終回のあと入り口の扉を閉じられ、ときには抽選会場として利用されながら、単なる空きスペースとなってしまった。
そして、今や怪物の会社なるものができていて、大変な混雑をみせている。昔ここに不思議な鶴や好奇心旺盛な兄妹、歴史上の人物たちがいたことなど、想像もできないような状態だ。

そして、今回の「ミッキーマウスレビュー」の最後だ。「ミッキーマウスレビュー」はもともとウォルト・ディズニー・ワールドのマジック・キングダムにあったものだった。東京ディズニーランドが開園する際にプレゼントという形で贈られたものだという。元々古いアトラクションで、アメリカからの移築だったために、故障するたびに部品探しをする必要があったらしい。ウォルト・ディズニーの声が唯一聞ける場所でもあり、ミッキーマウスというアニメがどういうものだったのか、がわかる唯一の場所でもあり、ディズニーの主要キャラクターが一堂に会する唯一のアトラクションでもあった。
一方でここもいつも空いており、大きなスペースを占めていたため、いつまで存在し続けるのかという噂はあった。ただ、このアトラクションは由緒あるものであり、万が一終了するとしても、フロリダから日本へ来たように、パリや香港などに移設されるのではないか、という期待を込めた意見もあった。
しかし、結局あっさりと終了を迎えた。新しいアトラクションを作るためだ。それは香港で見たことがあるが、たしかにおもしろい、よくできたものだ。でも、それは3D映像であり、「ミッキーマウスレビュー」のような深みも親しみもなく、見ている時間も短いものになる。

……最終日は平日に設定されたのは、混雑を避けるためだったのかもしれないが、結局混乱した。運営側の対応をある程度理解していたので、夜のパレードが始まる頃に現地に到着すると、案の定、混とんとしていた。こうなることは予想しているはずなのに、なぜ対応しないのかはわからないが、公式には列も作られず、ただ混沌した状況だった。
ここからは企業秘密なので詳しくは書かないが、うまく状況を判断して、気がつくと公式に作られた列の前の方にいた。周囲には元キャストと思われる団体や、よくみる常連さんらしき人たちもいる。その中でたまたま隣にいる人とお話する状況になった。その人は、子どもの頃初めて「ミッキーマウスレビュー」に入ったときにキャストさんに声をかけられたことがとてもうれしくて、それ以来のファンなのだといった。思い出の深いアトラクションがなくなるので、どうしても最後を見届けたいとのことだった。
いつの間にか列の人数がいっぱいになったようで、もうこれ以上並べないとのアナウンスがあった。その周囲にはさらに多くの人たちが集まっている。中には要領が悪く、早いうちから来ていたのに、列に入れなかった人もいるようだ。
その間をたくさんのキャストや、社員たちが右往左往している。そのうち、他のアトラクションからOBキャストを連れてきたようで、誘導などの手伝いをする姿もみえた。そんな様子を観察しながら、いろいろと状況を推理するのは楽しかった。
そのうち、今までの消えたアトラクションの最終回対応とは違い、整理券を配布し始めた。それが21時少し前くらいで、この微妙な時間は何があったのかがよくわからないが、整理券はゲット。
でも、列から離れて少し時間をつぶしただけで、もう最終回となってしまった。
たくさんの人がカメラやビデオを回し、上映中は子どもの鳴き声もなく、静まり返った会場が不気味なほどだった。いつもの雑然さもなく、かといって、しんみりとした雰囲気でもなく、どちらかというと、撮影に集中している人が多かった。
そんな中で、いつものとおり演奏は終了し、ミッキーマウスはいつものとおり挨拶をして終わった。終わった時に会場から大きな拍手があったが、それでも撮影し続けている人はたくさんいた。
これが最後の回だったため、映写室のある部屋の扉は開かなかった。いつもは終了と同時に出口と映写室の扉が開いて、ゲストが入れ替わるのだが、扉が開かないということは、最後である証であった(最終回に限らず、一日の終わりの回はそうなのだが)
出口に向かうと、取り囲むように多くの人がカメラを向けていた。まるで何かの取材を受けているようだったが、みんなゲストだった。最後のシーンをとるために集まっていたのだ。そして、出口の扉が固く閉じられるまで、彼らは撮影を続けていた。パークはすでに閉園時間を大きく過ぎていて、ファンタジーランドの一角以外は誰もいない「閉園後の世界」だった。

その中を歩きながら、ミート・ザ・ワールドの最終回で感じたような寂しさも悲しみもなく、ただ黙々と歩いていた。最後だというつらさや哀しさよりも、場違いなお祭りの場に紛れ込んでしまったような、虚しさを感じていたのだ。本当はお祭りでもイベントでもなく、たんに悲しい出来事のはずなのに、悲しんでいる方が疎外感を感じる最後の瞬間だった。

由緒あるアトラクションをもう二度と楽しめないという実感はまだない。次、遊びに行ったとき、固く閉じられた扉を見た時、それを感じるのだろう。
そして、その悲しさは「ミート・ザ・ワールド」の扉が閉じられたときと同じものだ。

結局は理想も、希望も、由緒も、テーマ性さえも、経営効率の前には勝てないのだ。キャストの指針では「効率」が一番最後になっていても、経営の上では「効率」が最優先なのだ。それを表しているのか、「ミート・ザ・ワールド」と「ミッキーマウス・レビュー」の終了(メインストリートシネマもか)だといったら、言いすぎただろうか。それもまた、どんどん新しくなるパークを楽しめない、悲しむだけの「一部の人間」の疎外感なのだろう。

1983年の開園当時の光景が、今、どこに残っているのだろう。開園当時からのアトラクションはまだいくつも残っているが、外装は大幅に、あるいは微妙に変わっている。地面は何度も塗り替えられ、キャストのコスチュームも同じものはほとんどない。
完成しないところである以上、変化は毎日のように起きているのだが、変わっていないもの……見えないものでもいい、東京ディズニーランドのどこかにないだろうか。

※休憩場所がことごとく消えてしまって、いやだなぁ、ということを言いたいだけではありません。ほんとうです。

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