現在、私は大学院に通っていまして、そこで使った発表をちょっと加工して今回は書きます。
企業の不祥事は業績の悪化だけではなく、存立そのものを脅かすことになる。アミューズメント業界だけを見れば、たとえばジェットコースターの死亡事故が起きた大阪の某遊園地は結局営業再開できずに消えてしまった。あるいは同じく大阪の某テーマパークは度重なった不祥事の為に入場者が長期にわたって低迷し、立て直すのに大変苦労をした。
企業が不祥事を起こす要因、問題が頻発する要因は個々の企業、ケースによって違う部分もあるが、共通していることもある。それが、企業のフィロソフィー、企業理念がないところ、あるいは形式的なものを掲げているだけで、社員に浸透させ、あるいは経営陣が自戒し、利害関係者、顧客に対して行動で示していないところである。
(大阪の某テーマパークは今、ちゃんと掲げています)
http://www.usj.co.jp/recruit/human/index.html
しっかりとした企業理念、哲学がある企業は、それを浸透し、実践するためにさまざまな仕組みを作り、社員に問いかけ、掲げたことに沿った企業活動をしようとする。だからこそ、不祥事や人為的なトラブルとは無縁でいられるのだ。
しかし、しっかりとした理念、哲学があるにもかかわらず、度重なる不祥事、あるいは問題が発生したのに、ほとんど業績に影響を受けなかった企業がある。
それが、東京ディズニーリゾートの運営会社である。
過去3年間の不祥事・問題だけでも、以下の通りである。
2007年 1月18日 料理に賞味期限切れチーズ使用(翌日発表)
2007年 1月26日 賞味期限を超過したチョコレートを使用した商品販売(内部調査結果)
2007年 2月 9日 予約システムの不具合修理の延長に伴う受付中止(~8月まで)
2007年 3月12日 商品(食品)にプラスチック片が混入(工場検査で発覚)
2007年 5月22日 料理に賞味期限が切れた油を使用(2日後発表)
2007年12月 9日 変電所配線ミスにより26のアトラクション停止
2008年 1月 3日 アトラクションで火災発生
2008年 1月 8日 パレード中にフロートから装飾物が落下(300kg)
2008年 4月21日 賞味期限が切れた赤ちゃん用麦茶を販売
2008年11月12日 料理に賞味期限が切れた鴨肉を使用
2009年 8月 1日 法人税更正処分等取消請求訴訟敗訴、控訴へ
2010年 1月 7日 商品(食品)の賞味期限誤表示にともなう回収
……では、この間、この運営会社の業績はどうだっただろうか。
売上高(百万円)
07/3 \344,082
08/3 \342,421
09/3 \389,242
10/3 \371,414
営業利益(百万円)
07/03 \34,110
08/03 \31,144
09/03 \40,096
10/03 \41,924
経常利益(百万円)
07/03 \30,187
08/03 \27,510
09/03 \38,824
10/03 \40,758
当期純利益(百万円)
07/03 \16,309
08/03 \14,730
09/03 \18,089
10/03 \25,427
年間入場者数
07/03 2,581.6万人
08/03 2,542.4万人
09/03 2,722.1万人
10/03 2,581.8万人
さて、どうでしょう。相変わらず利益率は低いのですが、それでも、事件の影響をさほど受けていないのが読み取れるだろう。
(ここを見ている人に説明する必要はないだろうが、09/03の数字がどれも高いのは25周年だったからです)
では、なぜ影響を受けていないのだろうか。
私の分析では以下のとおりである。
- 自分は大丈夫だとほとんどのゲストは思ってしまう(もともとしっかりしているので、イレギュラーだと思う、ということだ。たとえば食品会社で同じような事件が起きて急に売上が減るのは「ほかも、そうかも」と思われるからである)
- 「OLC」と「TDR」をイコールだとは思っておらず、報道されても気づかない人が多い(というか…)
- あまり大きく報道されない(なぞ)
パレードの事故や法人税更正処分の話、あと、その判決文にあったマスコミ関係のお話はいろいろと興味深いのだが、ここではあえて足を踏み入れない。
それはともかく、上記のような理由で、業績に影響はなかったのだ。ある意味、信用力のとても高い企業、ブランドだといえるだろう。
さて、テーマパークの運営会社は企業理念として、以下のものを掲げている。
http://www.olc.co.jp/company/philosophy/
しかし、みなさんも知っているとおり、ここは企業理念とはべつに、ディズニーの理念、「ディズニー・フィロソフィー」が並列して存在している。
いろいろと調べてみたのだが、「ディズニー・フィロソフィー」として成文化されたものはないようだ。ウォルト・ディズニーのが遺した言葉などを使って、さまざまな具体例などを組み合わせて、観念的に伝えているもの、といえるのだろうか。
あえていうと、こんな感じなのだろうか(あえて略)
あとは、キャストの行動指針「SCSE」もそれにあたるだろう。
そう、ディズニーはしっかりとした理念があり、従業員の指針がある。従業員の指針の一番最初は「安全safety」である。「SCSE」の言葉とその意味は、あのパークで働いている人は、外部の人も含めて必ず知っている言葉である(うそだと思うなら、誰にでもいいから聞いてみてね)
それなのに、安全にかかわるような問題が起きたのはなぜなのか。
結局はシステムではなく、人なのである。
東京ディズニーリゾートはマニュアルが完備されていることで知られている。マニュアルどおりであれば、上記のような問題はほぼ100%の確率で起きないのだ。
マニュアルの話については、いつかそのうち、ということにしても、いくらマニュアルがそろっていても、研修制度がしっかりしていたとしても、人がかかわる仕事はすべて、最後はすべて人なのである、ということだろう。
ウォルト・ディズニーはこういっている。
「世界中でもっともすばらしい場所を夢見て、想像することはできる。設計し、建設することもできるだろう。しかし、その夢を実現するのは人である」
結局そういうことなのだ。
※運営会社の不祥事として挙げたものは、オフィシャルに公開しているものである。また、これは過去のものであり、それに対する対策はきちんとなされている、ということになっているというのは付け加えておく。