サイトのご案内

「TDRの影を踏んで」は、「すいーぱーのホームページ」というサイトの一部のコーナーです。
そのため、ここの更新はかなり不定期ですし、最近はサイト自体の更新も「たまに」となっています。

頻繁にこちらを訪れる皆様には、そのあたりをご理解いただき、ブログの更新を気長にお待ちいただくか、サイトの方にまずは足をお運びいただければと存じます。

すいーぱーのホームページ
なお、サイトの開設8周年、11万ヒット記念として、特別ページを作りましたので、よかったら、お訪ねください。

バックナンバーはこちら

| | コメント (0) | トラックバック (0)

第34回 伝えたいことと、伝わってしまうこと

最近出版された東京ディズニーランドに関する本が話題になっている。感動秘話をまとめたという、あれだ。
そんな本が出版されるという情報を耳にしたときから、
「うん? いいのか?」
と思っていたのだが、試し読みした元キャストさんたちが素直に感動していたようなので、まあいいか、と思っていた。

その後、出版されたときに、立ち読みをしてみた。

感想は、……途中で気分が悪くなってしまった。いや、内容ではなく、文章のトーンが自分に合わなかっただけで、内容についてではない。
内容の感想は「みんな、こんなので感動するんだぁ」と人の悪さがでてしまっただけで、
しかし、そのあと、考えてしまった。
「これって、勝手に出版してもいいのか?」

『ディズニーランドで本当にあった心温まる話』とサブタイトルにはあり、著者は元社員だという。
『当パークのスーパーバイザーを約15年間つとめた著者が、キャストたちへ丁寧に語り伝えていた』ともいっている。
話の中には私が知っているものもあったし、私が知っている話が書かれていないこともある(それはいいのか)

以前に書いた「お子様ランチの話」も載っていたが、変な形になっていた。この話はたしかに運営会社の会長さんも以前、雑誌で口走っていた。いろんな人が話をしている。
ほかにも、元社員でコンサルタントをしている人が講演などで「体験談」としてお話しするネタもあった。

しかし、掲載された話の多くは、どう見てもゲストレターをそのまま、あるいは意訳して掲載したもののように見えた。東京ディズニーリゾートには、毎日たくさんの手紙が届く。お叱りや苦情も多いが(ほとんどか?)中には、お褒めの手紙や体験談などを書いてくるゲストもいる。それはパークの中で回覧され(個人情報はきちんと処理しますよ)、キャストのあるべき姿を教えるツールとして利用されているのだ。ときには冊子にしてキャストにたいして「無料」で配布することもある。もちろん、それもまた教育の一環だ。

著作権について書くと、私自身もあやしいところがあるのでごまかすが、少なくとも、著作権フリーではない。一義的には手紙を書いた人がもっている。事後承諾すればいい、なんてことは、法律にはどこにも書いていない。(本当に事後承諾が得られれば、違反ではなくなるけど、得られるまではどうなの?)
元社員さんが講演などでいろんな「いい話」を「引用」することはあるが、それは「しゃべり」であり、個人情報や機密情報が含まれない限り、問題はない。
しかし、「作品」にした途端、著作権の問題が発生する。
ディズニーに関するさまざまな本は出版されており、その中で「感動秘話」みたいなことが書かれているものもある。その多くの本は運営会社またはディズニーに「公認」された本である。そうでない本では、引用のようなあいまいな使い方をしていることが多い。
今回の本は、もちろん公認されていない。著者がコメントをつけているが、ほぼそのまんまんである。引用ではなく、転載だ。おそらく手紙の原文と表現を変えたり、汎用的なものに作り替えたりしているのかもしれない。
しかし、それはゲストがディズニーランドに対して送った手紙である。(ネットからの転用もあるみたいだけど)
それを講演でお話するくらいならまだしも、元社員が勝手にまとめて本にして商売をしている。
……この元社員さんのブログなどを見てみましたが、消された記述もあるけれど、とてもホスピタリティやディズニーの精神などとは無縁な文章なのでびっくり。
かかわりたくないので、ここで話を変えるのだが、なぜ気にしているかというと、私自身、このブログなどでどこまで書いていいのか、迷い続けながら書いているからだ。
「日本人って感動好きだからな。ディズニーランドで起きた感動の話をあることないこと書けば、売れるかなぁ」などと、妄想したこともある。(でも、いい話は身近に存在するはずなんだよっていうのが、こちら)
元社員、にくらべたら、ほとんど責任のない立場なので、あんな話や、そんな話など、気にしないで書いてもいいのだろうが、それを抑えているのが元キャストとしての矜持というもの。

基本的には表層的にしか見えない部分、簡単に言うとオンステージからしか見えないもの、あるいは会社案内などを見ればわかるものなどについて解説したり、てきとーな自分の意見を書いているにすぎない。それも自分が体験したもの、知っているもの、根拠があるものだけであり、知らないことや、バックステージに関する部分はなるべく足を踏み入れないようにしている。(これでも、そのつもりなのよ)
だから、ゲスト対応の話や、バックステージにおける作業関係、人間としてのキャストの部分などの話は「ほとんど」書いていないのだ。

それが自分の中での元キャストとしての節度なわけだ。

余計なことを書きくわえるが、元社員や元キャストなどの関係者が本や講演などで、内部のシステムなどについて書いている。体験談については、その人のものだから、問題ない。また、彼らが話している部分のほとんどはディズニーや運営会社の企業秘密ではない。なぜなら、ほかの会社がそのまま真似できないようなことばかりだからだ。あるいは、本当にいってはいけないことは書いていないか、書けないからだ。だから、【彼ら】は「黙認」しているに過ぎない。(原価率がいくらだとか、清掃に月いくらかかっているとかは企業秘密だからな、だから、そんな情報は外には漏れていない)
今回の本の問題と、これまででている本とは存在が違うのである。ただ、運営会社は今後どう対応するのかはとても興味があることである。ある意味、他人事ではないし。

一方で、あの本の存在を肯定したとしても、あの本のトーンだと、特別な状況じゃないと、いい体験ができない、みたいな感じ、に一般の人は思うのではないか。著者が元社員だったらわかっていると思うが、「スタンダード」をもっとも大切にしているはずである。一方で、特別な状況があったとき、どう対応するかが、ホスピタリティの重要なポイントであり、ディズニーの誇れる点である。あの本は、「特別な状況」の話ばかりなのだ。
キャストにとって「特別な状況」があったとき、どう対応すべきかという意味では、大切な例示だろう。一般の人にとってはどうだろう。「特別なことがないと大切にしてもらえない」という誤った話にならないだろうか。これが第三者からの話ならともかく、元社員からの話だったらどうなのか。

かかわりたくないといいながら、話を戻してしまうが、もう一つ不可解なことがある。なぜ著者はゲストレターやネットなどから転用したのだろう。著者がいうように15年も働いていたら、いくらでも自分自身が体験した感動秘話があったのではないか。自分の体験した話だけをまとめれば、こんなことにはならなかったはずだ。まあ、あのブログの文章から見る印象からすると……(自粛)

少ししか働いていない私にだって、いくつか感動体験はあるのに。

でも、転用されるといやなので、ネットには書かないが。
(ほかの記述も引用先を明示した「引用」ならともかく、勝手に転載しないでね)

| | トラックバック (0)

第33回 現場を知らないくせに

最近、よくトップダウンで無茶な企画や指令が飛んでくる。まったく現場の意見もきかず、現場のことも知らないのに、勝手なことだ……それでうまくいけばいいが、そう簡単には……というのは、どこかのテーマパークだけではなく、一般的によくある話だろう。私の職場でも同じだ。

昨年、ディズニー・インスティチュートによるセミナーが日本で開催された。アメリカでしか受けることができない、ディズニーのマジックの「コツ」の一端を学ぶことができるものである。アメリカのディズニー・インスティチュートではさまざまなプログラムが用意され、世界中の企業から、多くの人が学びに訪れている。
……と、今回はディズニー・インスティチュートの話ではない。日本で行われたセミナーでは、アメリカから二人のファシリテーターが講師となった。一人は約30年前、パートタイムとしてカリブの海賊のキャストからはじまり、ジャングルクルーズの船長などを務め、今は「正社員として」ディズニー・インスティチュートで第一線のファシリテーターとして活躍している人だった。もう一人もパートタイムのキャストから始まって、約20年間、今は正社員として働いているファシリテーターだ。
アメリカのディズニー社では、パートタイム、つまりアルバイトから始まって、フルタイム……つまり正社員として会社の中枢で働いている人は少なくない。現場を知り尽くした人が会社の中枢で活躍できる仕組みができているのである。
一方で、東京ディズニーリゾートはどうだろうか。運営会社の採用ページを見ると、活躍する社員が紹介されている。彼らは大学卒業後新卒で入社した人か、転職者だ。その中には、もしかしたら学生時代、キャストのアルバイトをしていた人もいるかもしれないが、その経験を買われて正社員となったわけではない。
その彼らが、テーマパークのイベントや商品などを企画し、実施しているのだ。

現在、アルバイトから正社員への登用制度もあるが、それはあくまでも現場の責任者としての採用であって、中枢部に行くことはきっとない。
以前、運営会社では新卒で正社員になった人は数年間、パークの現場で働き、そのあと本社の各部署に配属される流れになっていた。現場を体験して、その経験をもとに中枢で企画業務にあたるよう、配慮されていたのだ。
しかし、その制度も2000年代始めにはなくなって、現場で働くこともなく、新卒あるいは既卒で「正社員として」採用された人はすぐに本社で働くようになった。
現在も生きているのは「カストーディアル研修」のみだ。正社員なった人は一週間程度、カストーディアルとして働くのだ。そのわずかな経験だけである。
アメリカとの違いについて、運営会社は株主総会で「労働環境の違い」と説明した。
現在、現場を知らない正社員たちが本社の中心になりつつある。彼らは時間があればパーク内を歩き、現場のキャストから意見を聴き、そうして企画をすすめているという。
たしかにアメリカのディズニー社は経営陣やそれに近い人のほとんどは転職組……ヘッドハンティングされた人たちである。しかし、彼らをサポートする幹部クラスには現場出身の人は必ずいる。人事システムは柔軟で、積極的に現場の人間を登用する制度もある。日本の運営会社とは大きな違いだ。
アメリカのマクドナルドで、アルバイトから社長まで上り詰めた人がいた。やはり「労働環境の違い」の違いなのか。少なくとも日本ではないだろう。

……だから、どうだとはあえていわない。最近のイベントやパークの雰囲気、商品のラインナップなど、その評価によっても見方は変わってくるだろう。

昔、私がキャストをしていた頃、現場で働く正社員がよく口にしていた言葉がある。
「本社に異動にならないかな」
彼らは、今はほとんどない高卒採用者だった。そういう意味では、昔から本社と現場の間に大きな溝があったのだ。

そんなことも思いながら、今の運営会社の社員紹介ページ(総合職)を見ると、本社配属の正社員たちが夢と魔法の王国や冒険とイマジネーションの海を語っていることに、とても違和感を感じる。それはなぜだろう。

やっぱりそれは、「現場を知らないくせに」ということなのだろうか。それでもうまくいっていればいいのだが、本当はどうなのだろう。
ウォルト・ディズニーはディズニーランド運営管理のための建物を作ろうという意見に反対したと、ディズニー・インスティチュートの本に書いてある。

「オフィスにいる時間があるんだったら、パークに出ろ」 (かなり超訳)

| | コメント (0) | トラックバック (1)

第32回 あるテーマパークの最期

Tivoli2 ディズニーランドの元となったテーマパークがあることをご存知だろうか。
ウォルト・ディズニーは、初めてディズニーランドを建設するとき参考にしたのは、カリフォルニア州オークランドに1950年に作られた、最初の子供用遊園地「チルドレンズ・フェアリーランド」と、デンマークの首都コペンハーゲン中心部に1843年に作られた遊園地「チボリ公園」である。チボリ公園は世界最初のテーマパークともいわれている。

実はテーマパーク好きな私は、日本国内だけではなく、世界各地……といってもアメリカと韓国と香港で、ほとんどディズニー系のところしか行ってないけれど……を見てきたわけだが、チボリ公園に一度行ってみたいと、ずっと思っていたのだ。でも、デンマークは遠いなぁ、行くならまずはパリだな、などと思っていたのだが、
「よく考えたら、日本にもあったぁぁ」
と、気がついて、「倉敷」のチボリ公園に行ったのが、2007年の夏だった。
そのときのレポートはこちらを参考にしていただくとして。

その倉敷のチボリ公園が、2008年12月31日の営業終了をもって閉園した。
1997年7月の開業から11年、一度も単年度黒字にならず、運営主体の第三セクターの累積赤字が143億円に膨らみ、もう、どうしようもなかったのだ。総事業費474億円。初年度こそ9か月間で約300万人を集めたが、その後年々減り、2007年度は75万人だったそうだ。提携先のデンマーク・チボリ側との契約更新が2007年7月に不調に終わり、県が年約6億円の借地代負担の打ち切りを決めたのが決め手となったようである。

レポートにも書いたが、造りは日本国内のテーマパークの中でもかなりよくできたほうである。ディズニーランドのような雰囲気すらあった。
ただ、アトラクションはふつうの遊園地……いや、それ以下だった。あえて、町の中の公園の中に遊具がある、みたいなテーマパークという運営にすれば、それもありだと思ったが、そうでもない感じだった。
デンマーク・チボリ側が新型ジェットコースターの導入による集客アップを迫ったというが、結局日本側もデンマーク側も、なんでうまくいってないか、その根本を理解していなかったのが、今回の残念な結果につながったのではないか。

テーマパークはリピーターが命だ。とくに、倉敷市という、潜在的な顧客となる人口が少ない地域にある以上、しょっちゅう行きたくなるような運営をしなければならない。
そのわりには……。

1.公園なのに入場料が高い。
年間パスポートとかもあったみたいだが、なかなか買わないでしょう。新宿御苑とか、300円くらいではないか。

2.販売品は岡山土産ばかり。
地元の人は買わない。物販は大きな収入源であることを理解していない。観光客もわざわざここで岡山土産は買わないだろう。

3.ゆっくり滞在できる感じではない。
ペースが北欧なので、暑さ対策がない。また屋内施設が少なく、長時間いられない。

……細かいところはレポートを読んでもらうとわかると思うが、運営がとても下手だったのだ。もちろん、倉敷にあんな大きなテーマパークを作るという発想自体が、おかしかったのはいうまでもない。地域外からの集客ばかりを考えて、既存の商圏に目が行ってなかった……いや、作ることを前提にしていたので、そんなことは考えなかったのか。国や地方自治体がからむと、このあたりの数字はいつもあてにならないのは、なんでだろう。

……と、ケチをつけているように見えるだろうが、実はとても惜しんでいるのである。

ほんとうによくできた造りだったのだ。
Tivoli4 バックステージへの入り口など、ほんとうに雰囲気がそっくりだし、植栽の配置も完璧だった。とても雰囲気のよい「パーク」だったのだ。ディズニー以外のテーマパークで、ここまで「空間」を作り上げたところはなかっただろう。植栽がパークの周囲を包み、パークの中からは外は見えなかった。植栽の手入れも行き届いていた。北欧風の建物が立ち並び、まるでデンマークに来ているかのような錯覚を感じることもあった。
あれで、あとは遊具をもう少しまわりの光景になじませて、看板など日本語表示のものをもうちょっと風情のあるものにすれば……。

結局、いくら立派なハードであっても、それだけではテーマパーク……遊園地も含むかな……いや、ほかのいろんなものもいえるかな……運用、ソフトがしっかりとしていなければつぶれてしまうという、常識的な結果が倉敷のチボリ公園でも証明されたということだろう。

何度もいうが、遊具はどうしようもない感じだったが、全体的な造りは日本でも有数な出来だった。

一方で、東京ディズニーリゾートやユニバーサルスタジオ・ジャパンでは、イベント、ショーやパレードの充実をさらに進めている。それがより多くのゲストを呼び込み、収益を上げているわけだ。ただ、その結果パークがもっている本来の姿が薄れつつあるのではないだろうか。
倉敷のチボリ公園は、ディズニーランド本来の姿の影を見ることができる……しかし、それも昨年末で消えてしまった。見たければ、デンマークまで行くしかない。とても残念なことである。

いいパーク(公園)だったのにね。
新年最初の話題がテーマパークの最期とは……ますます不景気になる今、ほかのテーマパークや遊園地も他人事ではないはず。
……なんてことを考えないで遊ぶところがテーマパークなので、今年も気軽に遊びに行きましょう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

第31回 期待を超えるサービスとは

「期待を超えるサービス」という言葉を聞いたことがあるだろうか。最近、サービス業系を中心によく使われる言葉である。ディズニーがこの言葉をよく使うようになり、それが世間にも広まったようである。私がキャストだった頃は、このようなワンフレーズはなかったが、似たようなことは常に言われていた。
簡単に説明すれば、客はニーズ(期待)を持っているはずである。これはを満たすことはサービス業としては当然のことである。ただ、同時に客は「こうだったらいいのになぁ」という願望を同時に持っている。この願望を超えることが「期待を超えるザービス」なのである。

さて、こんなことをいう私は、自分自身もサービス業系に勤めていることもあって、ほかのサービス業に対して採点は辛い。
私はわりといろんなテーマパークへ遊びに行っているのだが、ホテルにもよく泊まる。どちらも趣味みたいなものであって、勉強しようとか情報を集めようとか、そんなつもりはもうとうない。そんなことをするような仕事をしているわけでもない。
ただ、ホテルとテーマパークについては、とくに採点が辛くなるのはいうまでもない。
ホテルもテーマパークも定型的な対応についてはマニュアルがしっかりしているので問題は、ふつうはない。ここで「期待を超えるサービス」ができるかどうかは、マニュアルにはないイレギュラーに対するときである。

この前、京都の南禅寺近くにある有名ホテルに泊まった時のことであった。日中、寺社をめぐり、夕方いったん部屋に戻ったあと、シャワーを浴びて、夜間拝観にいこうとしたときのことだった。綿棒で耳を掃除していたら、

「すぽっ」

たしかに音がした。綿棒の先をみると、ついているはずの「綿」がない。耳の中に取り残されてしまったのだ。耳かきでとろうとしたが、どうもうまくいかない。

そこでコンシェルジュに電話をしてホテルに医者か看護師がいないか聞いてみた。
もちろんいない……ドラマのように常駐しているようなところはほとんどないだろうな。で、事情を説明すると、土曜日であったが緊急対応してくれる耳鼻科を紹介してもらい、タクシーも手配してもらった。

……ここまでは、ふつうである。ここでのポイントは、私の不注意ではなく、ホテル備え付きのもので病院に行く羽目になったということだった。
タクシーで病院に行くと、夜間診療なのにとても混んでいた。その多くは小さなお子さんで、親って大変だなぁ、と思いながら1時間と少し待たされる。
……治療は数分。だって、つまった綿をとってもらうだけだからね。ただ、素材はどんなものかわかんないし、もしこれで難聴にでもなったら、どうしよう、などと心配はしていたのだ。
その支払いは当然自弁で保険証もないので、7000円近くとられた。タクシーが1500円だから、けっこうな出費である。
そのあと、そのまま清水寺の夜間拝観などを見てホテルに帰ってきた。

でも、何の音沙汰もない。

自分から何かをいうのも変だと思ったので、翌日様子を見ようと思った。
しかし翌日も何もない。しかたがないので朝食後、でかける前にフロントに声をかける。
そうしたらマネージャーがでてきて、
「昨日は帰りが遅いようでしたので、今日のお昼くらいにご連絡しようかと思っていました」
……京都に来ているのに、昼間に部屋にいると思うかね、ふつう。言葉での謝罪はあり、領収証のあった治療費と行きのタクシーの代金を領収証と引き換えで金額分を受け取る。まるで、職場で立替精算をしているようだった。私は綿のとれた綿棒を渡して「一流ホテルなら、もっといいものを使ってもらいたいものですね」と一応意見をして終わる。

あれ、でもホテルの備品のせいで病院にはいくことになったし、時間も浪費しているんだよな。何かないのかな、とは思っていた。しかし、私もサービス業で相手の立場もわからないでもないし、こんなことで騒ぐのもいやだし、きっと何か考えているのだろうと思って、チェックアウトまで待ったが、結局何もない。

チェックアウトのときも、詫びながらふつうに請求書を出してきたので「……ということがあったのに、何の対応もないんですね」というと、フロント係はあわてて裏にひっこんでいく。
「ないんですか」ではなく「ないんですね」というのが、私のせいいっぱいの心づかい、あるいは嫌味か。
すると昨日のマネージャーがでてきて、宿泊中に飲食した分(バーで飲んだ4000円くらい)についてホテルが持つ、と言い出したのだ。

「客が何もいわなければ、何もしないつもりだったのか。何か対応するつもりなら、少なくとも昨日の精算のときに何か一言いうべきではないのか。これが、ああいう目にあった客に対する、このホテルの対応なのか」

今まで穏やかに話していた私はきつい口調で言い、「全部自分で払う」といって、支払いをしたあと、急いでホテルを出たのである。べつに料金を割り引いてほしいことを期待していたのではなく、有名ホテルがこういうとき、どんな対応をするのか、見守っていただけであり、フロントで何か云ったら、最悪そんな対応だろうな、と思っていたことをやってきたので、つい感情的になってしまったのだ。

もったいなかったか。でも、武士は食わねど高楊枝、ということで。

……それからもう何週間、結局そのホテルからは何も音沙汰はない。

さて、このホテルの対応から、何が読み取れるだろうか。
このホテルは「期待を超えるサービス」など考えていないのである。クレームを気にしているだけなのだ。クレームをいわれなければ何もしない。クレームが来たら、何か対応しよう……それだけなのである。
今回の件では、物理的身体的なダメージはなかったし、ふだんクレームを扱う方の立場としては、なるべくクレームめいたことを言いたくなかったので、黙っていたわけだが、きっと初期段階で大騒ぎをしていれば、対応はかなり違ったのではないか、ということは、このホテルの対応から読み取れるのではないか。私のように温厚な(ほんとか)人間でなかったらどうなったことだろう。私だったから、ここでネタにされる程度で終わるんだけどね。

では、この件でホテルはどのような対応をすれば「期待を超えるサービス」を実践できたのだろう。
最初の段階ではホテルもどんな状況かはわからないので、対応しようがないだろう。ただ帰りが遅かったら……もしかしたら重大な容態になっているかもしれないわけで、何とか連絡をとろうとするものではないだろうか。部屋にお見舞いのメッセージカードをおいて、帰ったら連絡してね、程度でもいいだろう。

翌日、精算するときもきっちりではなくて、見舞いも含めて1万円とかを包んで渡せば、バーの飲食代などよりはるかに安上がりに済むだろう。
あるいは、飲食代を本当に最初から負担するつもりなら、このときにそういえばよかったのではないか……ただマネージャーも口走っていたのだが、この段階でそんなことをいうと、何を飲み食いされるかわからないから、ということもあるだろうが……ここが誠意のないところなんだな。
バーで飲んだときの精算時に「今日はホテルが持ちます」みたいなことがあれば、けっこういい対応だよね。

またはチェックアウトのとき、最初から割り引いた請求書を提示すればよかったのではないか。

……あるいは、もっといろんなことが想定できるだろう。手紙とかお花くらいであればお金もかからない。
私が願望としてもっていたものは、治療費の精算のときに見舞いも含めた金額を渡されるかな、とか、部屋に戻った時に見舞いの手紙とかお花があるかな、とか、従業員が部屋に訪ねてきて、見舞いとかお詫びとかがあるのかな、というものだった。期待としては、「何かはあるだろう」という、昨今のクレーム社会の中では、かなりささやかなニーズでしょ? リッ○カールトンに泊まったわけじゃないからね。

期待を超えるサービスとは、必ずしもお金をかけたものではないのだ。従業員の心配りひとつでいくらでも可能な魔法なのである。

長々とディズニーじゃない話を書いたので、最後はディズニーの話を一つ。
東京ディズニーリゾートでどんな目にあっても暖かく見守っている私ですが、一度だけクレームというか、意見をのべたことがある。
ある施設の対応でおかしなことがあったので、キャストに質問した。すると、どんどん偉い人が入れ替わりするのだが、いっこうに質問に対する回答はなく、なぜか言い訳ばかり。
話にならなかったので、違うところに行ってお話をしたらすぐに回答をいただいただけではなく、求めていない対応までしてもらえた、ということがあった。
(具体的なことは差しさわりがあるので書けないが)
……このように、「期待を超えるサービス」という言葉を一般のキャストまでがふつうに使う東京ディズニーリゾートでも、そう簡単にはいかないのだ(だから、クレームが多いのかな)
だからこそ、キャスト教育の中で、あるいは日常的な業務の中で「期待を超えるサービス」という言葉が繰り返し使われ、そういう対応をしようと努力しているのが、ディズニーのテーマパークなのだ。

……なんて、偉そうなことをいいながら、自分の職場では「期待を超えるサービス」という発想自体が存在しない。いかに期待に応えていくかだけで精いっぱいだ。それでも商売ができているようなところに勤めている私だからこそ、他人様の対応には辛い採点なのだろうな。

ディズニーランドのクレーム対応について語ろうとしたんだけれど、長くなったので、またいつか。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

第30回 変わりゆく舞浜で ―パートⅡ―

早いもので、東京ディズニーランドはもう25周年である。宣伝では「リゾートが25周年」と言っているが、あそこがリゾートになってからはまだ数年しか経っていないのだ。
それはともかく、これまで何回、遊びに行ったことだろうか。年に2~3回くらいしか遊びに行っていないのだが、いくたびにパークは変わっていく。単なる駐車場だったところには、いつの間にか豪奢なホテルが立ちはだかり、エントランスからの光景が一変している。最初は違和感があったタワー・オブ・テラーも舞浜の光景の一部になっている。

もちろんパークの中もすっかり変わった。樹木は生い茂り、あちこちで日影を提供している。通路には、10周年より昔はほとんどなかった小さな店が乱立し、売上に貢献し、人の行き来を阻害している。
そういえば、昔はあちこちで販売していた陶器製のフィギュアや置物、ブロンズ像をすっかり目にしなくなった。もともと、そんなに売れるわけでもないし、扱いが難しく、すぐに割れたり塗装が落ちるやっかいなものであったが、それを店に陳列すること自体がショーである、ということだったが、今やどこの店でも似たような商品を販売している。コンフェクショナリーでは昔、キャラクターとは関係ないアメリカのふつうのお菓子を販売していたことをご存じか?もちろん、それもショーとして販売していたのだ。それもいつの間にか姿を消し、千葉物産館もいつの間にかキャラクター商品があふれている。
ワールドバザールの個性的なお店もみんな統合してしまった。あれもみんなショーの一部だったはずだけどね。
客単価を毎年上昇させるこのパークの強みは、こうした物販戦略のおかげなのだが、その光景には遊びに行くたびに違和感を感じる。

違和感を感じるといえば、魅惑のチキルームでは、「はーい、よくできました」とキャストにいつも褒められていたペリー、モーリアという鳥たちはいなくなり、いつの間にか異星人に乗っ取られてしまった。このアトラクションをこよなく愛していたウォルトが見たら、なんというだろうか。火の神はもう噴火しないのだろうか。

それから、長らくジャングルのセールスマンとして手にクビにした部下たちをぶらさげていたサムが転職して、バナナ売りになっていた。手にはクビではなくバナナ。たしかに開園当初からあれは差別の象徴だとか、いろいろと言われながらも彼はがんばっていたのに。あのアトラクションが、当時の欧米人が抱いていたジャングルのイメージを体験するものである、というのではなかったのか。やっぱり差別意識がどこかにあるのか?でも、アメリカのサムは変わってないよね。
船長さんたちの案内も最近はすっかりバラエティに富んでいるが、基本の案内すら飛ばす人も多く、そんな人に限って上滑りしている。昔はその寒さも魅力だったが、今は基本の案内すら飛ばしている分、単につらいだけである。

パレードを見ようと思えばたくさんのゲストが早い時間から待っていて、ゲストコントロールのキャストが早い時間から延々と注意事項を述べている。パレード開始直前でも前の方で見れたり、ショーが始まってからでも着席できたような時代は幻だったのだろうか。

幻といえば、消え去ったアトラクションもたくさんある。このパークは「一匹のネズミ」から始まったはずなのに、「映画館」は物販のために消滅させてしまうし、ゲームセンターも機械の入れ替えを怠り続けた末に、飲食販売のためにつぶしてしまう。
ここが日本にあるパークなのだという象徴であった、世界と日本のつながりを高々と掲げたミート・ザ・ワールドもつぶして、次に造るのは子供向けのアトラクションだ。ウォルトが理念をこめて作ったトゥモローランドの残照は、日本のパークのどこにあるのだろう。

カストーディアルの道具もコスチュームも変わり、清掃人から歩くインフォメーションに変わり、清掃のパフォーマーから、そしてアートを描くパフォーマーに変わっていく。……私の知っている「舞浜」は少しずつ消えていく。私の知っている東京ディズニーランドが少しずつ変わり、知らない光景になりつつある。
これが、永遠に完成しないテーマパークの有り様なのだろう。
このように思う私はきっと舞浜原理派、舞浜年寄の部類に入るのだろうな。

と、悲しむ私は、ウォルトの言葉を思い出した。

「あなた自身のために造るのではない。ゲストが何を望んでいるのか理解して彼らのために造るのだ」 (ちょっと意訳)

そうか、今のこのパークは、今のゲストが望んでいる姿なんだよな。運営会社が望む姿じゃないんだよな。そう、きっとそうなんだよな。

ということで、これからも、変わりゆく舞浜を楽しみますかね。

※パートⅠはこちら

※200/.11.5追記
ミッキーマウスレビューが来年5月25日に閉鎖されることが本日、運営会社から発表された。東京ディズニーランドが1983年開園することになり、フロリダのマジックキングダムから贈られた世界唯一のアトラクションをつぶしてしまうそうだ。これも、ゲストが望んだことなのだろうか。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

第29回 ファンクラブの集い

あのテーマパーク運営会社の株式が公開され、つい購入したまま、今も持ち続けている。パークの変容を目の当たりにして、運営会社の姿勢にすっかり失望している今、株式を持ち続けても仕方がないのだけれど、このまま売ったら大損なので持ち続けているにすぎない。ミート・ザ・ワールドがあった頃は、「いったいどうするつもりなのだ」という心配から、毎年のように株主総会に参加したこともあったが、今はもう、その心配もなくなってしまった。
おまけに、あの会社の株主総会は独特な雰囲気で、どうもなじめない。まるで、ファンクラブの集会のようなのだ。Sn360106 それに、幕張まで行く気力がないため、最近はまったく行っていなかったのだが、今回たまたま休みが合ったことと、ちょっと興味がある事項もあったので、ひさしぶりに参加してみたのだ。

……内容も雰囲気もあまり変わっていなかった。そもそも、参加者の多数と開催者側に大きな認識の隔たりがある。それが広がっているようにも思えた。それはあとで書くとして……。

前半は報告事項。すてきな映像とあいまいなナレーションで「ごまかしているな」と感じた部分もあったが、いつものとおりつつがなく終了。メインは採決前の質問の時間だ。

Q.「CO2削減のために何か実施していないのか」
A.「ホームページでも公開しているが、いろいろと環境に配慮している。CO2を出にくい素材を使うとか、コージェネ使うとか。ソーラー発電も実験している最中で、実用化できるようであれば使う」
 ※あれ、あそこのピザ屋の屋上にあるのはたしか……。

Q.「海外への進出は考えているのか」
A.「いろいろと検討しているが、この場での回答は控えさせてほしい」
 ※D社とは関係なく、という方向みたいだが、だから話がまとまんないんだな。

Q.「大都市に作る予定の屋内テーマパークはダウンタウンディズニーにあるものか」
A.「フロリダのダウンタウンディズニーにあるディズニー・クエストではない。もっと違うものを検討している」
 ※個人的にはディズニークエスト好きなんだけどな。

Q.「最近、セミナーのようなことをいろいろとやっているが、日本でディズニーインスティチュートを行なうつもりなのか」
A.「ここ数年、ディズニーアカデミーという形でセミナーを開催している。ディズニーインスティチュートについては昨年は別の会社で開催したが、それとは趣旨が違う。今回はテストケースとして将来的にはディズニーインスティチュートを行なう方向で考えたい。そのときには、バックステージツアーなども実施することを検討する」
※総会の報告では一言も触れなかったが、回答からすると、けっこう話は進んでいるな。でも、今のところ、集客に困っているようなことも口走っていたけれど。

興味深い話はそれくらいで、あとはもう……いつものとおりだった。

さて、この株主総会に来た人たちの多数と開催者側の意識の違いは、この質問によって明らかになった。

「子供連れもいるとおり、ここに来た株主の多くはキャラクターに会えるかもしれないと思ってきたのだ。それくらいできないのか」

それに対する会社の回答は明快だった。

「いわゆる懇親会のようなものを指しているのだろうが、弊社では株主総会を法令に基づいた重要な経営事項の審議決定機関と位置付けている。法令も基づき、今後も開催していく」

ということだった。娯楽産業の会社がなんで?サン○オの総会とはぜんぜん違う……といった声があちこちから聞こえた。この運営会社は冷然とした、大手不動産会社と大手私鉄によって設立された日本的な会社なのだ。取締役をひな壇にあげて、社員株主を一番前に座らせ、つつがない議事進行をすすめる、よくある会社なのだ。(それにはいろいろと理由もあるのですが、ここでは書けないけどね)

もう一ついえば、キャラクターグリーティングについて、

「契約でキャラクターの利用はテーマパーク運営に関することについてのみとなっている。株主総会は弊社の経営に関する事項であり、今後もそれはない」

運営会社側の回答は正しい。株主総会の運営方法も正しい。法的、企業的にはね。私もそれでいいとは思う。
だが、ここに来ている株主たちの多くはそう思っていない。この株主総会にも夢と魔法があると思って……あるいは信じて来ているのだ。エンターテイメントの企業なのだから、何かがあると思っているのだ。

ここに大きなギャップがある。

運営会社のいうとおり、株主総会は「法令に基づいた重要な経営事項の審議決定機関」としたいからなのだ。余計なことをして問題は起こしたくないのだ。パークのクレームや貴重なご意見を拝聴する場にはしたくないのだ。

何か、特別なことをすれば、それを目当てにますます「ファン」が訪れてしまうだろう。質疑応答では、株主総会であることを度外視して、本来ゲストの立場で直接クレームや意見として直接キャストや会社の窓口でいうべきことを、偉い人がいるというだけで、株主総会で直接訴えようとする人が増えてしまう。経営なんてどうでもいい、もっと客……いや私たちの要求に答えろ、と。株主なんだから優遇しろと。

そうでなければ、株主用のファストパスを配布しろなどいう意見は出ないはずだ。株主のために年間パスポートの代金を優遇しろという意見もそうだ。それを使う姿を見た大多数の一般ゲストはどう思うかなど考えないのだ。それが経営に与える影響など、関係ないのだ。

私だって、パーク運営に関する不満はたくさんある。事情を知った上で指摘したいことや意見もある。だが、それはゲストとしての視点であって、あるいは元キャストとしての視点であって、株主としての視点ではない。イコールだと思っている人がいるから、あんな質問が多数出るのだろうが、寝る場所を作ったり、株主のための特別待遇を作ることで、会社や株主に最終的にどんな利益があるというのだろう。それで利益が増えて配当が増え、株価が上がるのか。企業価値があがると信じているのか。わざわざ株主総会で主張しないといけない事項なのか。一般ゲストとして手紙や電話では意見を聞いてくれないと思っているのか。もし、突きつけた意見が通らなかったとしたら、その意見自体に問題はないのか、とは思わないのか。キャストに訴えたり、お客様相談室に言っても無駄だと思っているのだろうか。(だと思っているから、クレームを述べる人もいるのでしょう)

そんな会社の株をなぜ持っているのでしょう?(私のように売れないからか)

株主総会で偉い人に訴えればなんとかしてくれる、みたいな光景など見たくはないのだ。
クレームや貴重な意見はお客様相談室にでも伝えてほしい。きちんとした意見やクレームなら、必ず実現する……かどうかはわからないけれど、ちゃんと意見を取り入れるシステムは整っている。それだけは、おそらく日本有数である。

そういう意味では、今後とも粛々とした株主総会を目指してほしいものだ。株主総会で言ったことが実現した、みたいなことは、見たくないものだ。もし、株主の意見で何かが変わった、ということがあったら、あのテーマパークも地に堕ちた、としかいいようがない。

ただ、会社が主張するとおり粛々とした株主総会を開催し続けるつもりなら、今後のテーマパーク運営についてや、運営の理念、あるいは新たに展開する事業について、もっと夢を語ってほしいし、魔法をみせてほしい。冒険してほしいし、イマジネーションを披露してほしい。株主総会では、夢が語られない。企業理念や、実際に運営しているテーマパークとはかけ離れた総会だ。そういう意味での夢や魔法を見せてほしいものである。

今のままでは開催者も個人株主も中途半端だ。ファンクラブの集いと思って参加する人たちと、つつがなく議事進行をして無難に終わらせようとする会社側。このギャップを埋めないまま、今後も毎年開催されていくのだろう。上記のような理由で。

それとも、運営会社が心を入れ替えて、テーマパークについてのささやかな意見やクレームが山のように出てくることも覚悟して、いや、ちゃんと受け止めるつもりで、ファンクラブの集いのような総会や懇親会を開く日が来るだろうか。個人株主のほとんどは運営会社のファンではなく、テーマパークのファンであるという事実を運営会社がきちんと受け入れる日が来るだろうか。個人株主が特別なテーマパークの顧客であることを自覚し、特別なサービスを提供しようと思う日が来るだろうか。(今の状況では、それはないな)

どちらにしても、ファンクラブの人たちによる運営会社側への要望やクレームを聞くために、あるいは、運営会社の言い訳とつつがなくやりすごそうという態度を見るために、毎年わざわざ幕張まで行くことはしばらくしないだろう。

自分が職場でお客様から受けている要求やクレームに対応する姿を思い出して、つい心情的に運営会社の味方になってしまうから。
「お前じゃ、話にならん。社長をだせ」みたいな話は、目の前の現実だけで十分なのだ。

Sn360113 ※かしこいファン株主は、会場でもらえるこのお食事券を受け取ったら、株主総会なんて見ないでさっさと帰るんですよね。私はこれだけでは交通費の元もとれないので、ちゃんと話は聞きますが。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

第28回 マニュアルの賞味期限

私の働いている職場では、上の人が何かというと「マニュアル」を作れという。
この前も、私が前にいた部署でトラブルが頻発し、前に担当だった私がマニュアルをちゃんと整備していないからだ、みたいな声があがった。
ちゃんと基本的なことはマニュアルにしたし、それ以外のことは後任の人にきっちりとOJTで教えたのだ。問題は後任の人が異動になり、その次の人にちゃんと伝えなかったことや、マニュアルの変わった部分を文書として残さなかったことなのだ。

マニュアルで大切なことは、ちゃんと作ることではなく、現状にあわせて、常に変更していくこと。そして、その変更を臨機応変ではなく、システム的に行なうことが大切なのだ。

そして、「使われること」がもっとも重要なのだ。

さて、ここから本題に入るのだが、2008年春、東京ディズニーランドのベビーセンターで、期限切れの商品を販売するという事があった。パウダー状の麦茶の賞味期限が切れていたというものだ。

期限切れのものを販売したのは、これだけではない。

2007年5月には東京ディズニーシー内のレストラン『ニューヨーク・デリ』の製造者の設定する賞味期限を1日過ぎた「カラシ入りファットスプレッド(食用油脂)」を使用。
2007年1月には東京ディズニーランド内のレストラン『イーストサイド・カフェ』で賞味期限の過ぎたモッツァレラチーズを使用。

といったことがあった。

なぜ、このようなことが起きるのか。
答えは簡単である。マニュアルが守られていないからだ。(※ほかにもいろいろとあるかもしれませんが、外形的な部分を外から見ると、ということですので)
あのマニュアル社会といわれる東京ディズニーリゾートでも、マニュアルが守られない、という事実がある、ということなのだ。
おそらく、マニュアルではこうなっていたはずだ。(簡単に書くとですよ)

  1. 補充する製品の期限を確認する
  2. 補充するとき、すでにある商品の期限を確認して、そのうしろに新しい商品を確認する
  3. それと、開店前に回転の悪い商品は期限を確認する(あ、これはマニュアルというより……自粛)

もちろん、仮定の話です。想像です。架空の話です。真実は必ずしも書いていません。本当です。

……さて、マニュアルに書いてある。ちゃんと教わっている。でもなぜそうしなかったのか。

実は、そこがマニュアルの一番の問題点なのである。
ケータイなどの電気機器のマニュアルを全部読む人はあまりいないだろう。読まなくても使うことができる。使い方はだいがい、実は書いてあることとイコールだ。
だが、業務のマニュアルは実際の業務と完全に一致していることはほとんどない。

たとえば今現在行なっている業務のマニュアルを書くとする。けっこうな時間がかかるだろう。書き上げたとき、実際の業務と完全に一致しているだろうか。書き上げた瞬間は一致しているかもしれない。だが、それが1年後、2年後、一致し続けているだろうか。

もし、一致し続けているとしたら、よほど変化のない仕事か、そうでなければ、現実を無理やりマニュアルに合わせているのだ。

現実は常に変わり続けている。それなら、マニュアルも変わり続けなければならない。ディズニーランドのマニュアルも常に変わり続けている。開園当初ともかなり変わっているし、あるいはアメリカのものともかなり変わっているはずだ。
東京ディズニーリゾートでも、常に現実に即したマニュアルにするよう改善活動が行なわれている。
具体的には……自粛。

ただディズニーの場合、マニュアルの変更には「諸般の理由」で時間がとてもかかるので、現実を反映する臨機応変さが欠しい。それでも工夫をいろいろとしているのだが、それは置いておくとして、しかし、それでも現実とマニュアルの乖離が起きる。

乖離が起きると、マニュアルは使われなくなってしまう。現場での運用が優先されてしまう。
今回取り上げた賞味期限の問題だが、一度くらいであれば、担当した人がたまたまミスをした、とか、イレギュラーではないかと思われるのだが、こう続くと、マニュアルの問題ではないか、と外の人が考えるのは、マニュアル社会のパークと思われている以上、仕方のないことだろう。

つまり、マニュアルどおり、運用されていないのだ(と想像してしまう)。
あまり余計なことは書きたくないのだが、マニュアルと現実との乖離というどこにでもある問題が、あのパークでも存在するという話を耳にする。
そのための対策も講じようとしているようだが、現在の問題をどれだけ解決できるだろうか。
(あえて書くが、今回取り上げた賞味期限の問題は各店舗の社員が開店前にさりげなくチェックしていれば起きる問題ではない。マニュアル以前のそういうさりげない努力でなんとかなるものだし、そうしてきたはずだが……って、余計な話を書いてしまったか)

だからといって、マニュアルを駆使するディズニーのシステムが間違っているわけではない。
今回の期限切れ商品の販売や、最近はほかにもいろいろと問題が発生、あるいは表面化しているが、原因の究明などや対処など、本来行なうべき手順と実際の手順との洗い出しによる問題点の発見など、マニュアル化しているおかげで、毎回素早い対応ができたのも事実である。(もちろん、そのためにも常に最新の正しい姿をしたマニュアルにしておかないといけないわけだが)

マニュアルの重要なポイントとは、

  1. マニュアルと現場での運用との融合
  2. マニュアル変更の手順
    (勝手にどんどん変えていったら、マニュアルとしての信頼性がなくなってしまう)

このポイントを抑えることで、現場で使ってもらえるマニュアルになる。
さらっと書いたが、これはとても難しい課題なのだ。それについて書くと、とても長くなってしまうし、そんな暇はないので、考えてみてください。

少なくとも、うちの職場では、上記の「重要なポイント」の大切さを理解させることからはじめないといけないので、道のりはどこまでも遠い。この大切さを理解しないと、マニュアルなんて、あっても意味がないものなのに。

マニュアルは、製造日から期限が切れるまでの時間が、思ったよりもずっと短いのである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

第27回 こんなところでショーが始まるなんて思ってもみなかったでしょ?

東京ディズニーリゾートだけではなく、あちこちのテーマパークに顔を出すのが趣味の私。この前もユニバーサルスタジオ・ジャパンで新しいショーなどを鑑賞した。

関東でもコマーシャルが放映されている「ファンタスティック・ワールド」は道のど真ん中にステージを作り、30分近くのショーを行なう。はっきりいって、ステージの造りはよくできていたが、独りよがりなショーだったので、観客としては「何?」という感じで終わってしまう。
テーマパークでは、そのショーを目的にきている人は少ないので、いかに観客に「共感」を持たせるか、あるいは、その世界に入ってきてもらうかが重要なのだ。
それを安易にできるのが、おなじみのキャラクターを登場させることなのだが、この「ファンタスティック・ワールド」では、そういったものは一切出てこなかった。
一方、おもしろかったのが「ウィケッド」。劇団なんとかでもやっているミュージカルの特別版だこれはオズの魔法使いの話ではあるが、メインのキャラではなく、魔女が主人公の話だ。とてもよくできたお話だった。観客が知らず知らずのうちにその世界に引きずり込まれていく魅力があった。知っている話、ということもあっただろう。
「ピーターパンのネバーランド」は、ある意味おなじみのピーターパンのお話なのだが、せっかくの立派なステージが今ひとつ生かされていない構成だった。もっと話を絞って、もっとステージを生かす演出がほしかったけれど、見ごたえはあったのだ。

……というのは、個人的な感想なのだが、ここでのポイントは、USJおなじみのキャラクターがどれにも出ていないということだ。

東京ディズニーランドでも、以前はおなじみのキャラクターに頼らないショーがいくつもあった。ダイヤモンドホースシューレビューにラッキーナゲットカフェステージ、古いところではDr.バーカーのメディスンワゴン、プラザパビリオン・バンドスタンド、トゥモローランドステージ……そこにおなじみのキャラクターは出てこなかった。昔、昼間に行なわれたシンデレラブレーションも純粋なシンデレラだけのお話だった。

ディズニーのテーマパークの楽しみの一つはショーである。しかし、今の東京でのショーはみんなキャラクターショーと化している。東京ディズニーシーのブロードウェイ・ミュージックシアターもいつの間にかキャラクターショーになっている。(アンコールはよくできていたけれど、たしかにゲストには受けなかったようで)
今の東京ディズニーリゾートでは、キャラクターに頼らないとゲストにアピールできないほど、企画力が落ちているということなのか。たしかにキャラクターを出していれば外れることはない。「あ、ミッキーがいる」というだけで人は集まるだろう。すっかり、守りの体制になっているのだろう。

一方で、ユニバーサルスタジオ・ジャパンでは、一部のパレードやショーをのぞいて、ほとんどのショーでおなじみのキャラクターはでてこない。しかし、どのショーも一部(新しいやつとかね)をのぞいて、鑑賞に堪える水準だ。ショーだけを見るために行ってもいいように思うほどだ。ウォーターワールドのような迫力あるものは、TDRではけっして見ることができないものである。

最近、東京ディズニーランド25周年記念として、歴代のパレードやショーなどが入ったDVDが発売された。自分がキャストをしていた頃のパレードやショーを見ると、とても懐かしい。だが、ここに収録されているものはすべてキャラクターのいるショーだ。昔はキャラクターのいないショーをたくさんやっていたというのに、このDVDには入っていない。これが現在の東京ディズニーリゾートのスタンスということなのだろう。

以前、アナハイムのディズニーランドで白雪姫のショーを見たことがある。もちろんおなじみのキャラクターは一切でてこない、純粋に白雪姫のストーリーを追った30分ほどの二部構成のショーだった。台詞は英語でわからなかったが、見ているだけでもわかるようになっているし、十分楽しかった。そんなに混んでいる日ではなかったが、ショーベースとおなじくらいの広さの場所はゲストでいっぱいだった。ディズニーの白雪姫の世界を堪能できるショーであった。
東京でもこういうショーをやらないかなぁ……と一瞬だけ思ったが、きっとやらないだろうな、とそのときは思ったものだ。

この25年間で一番好きなショーはおなじみのキャラクターが出てこないものである。「こんなところでショーが始まるなんて、思っても見なかったでショー」といって、まばらなゲストをつかみ、終わる頃には満席になっていたショーだ。
きっと、そんなショーを東京ディズニーランドで見ることは二度とないのかもしれない。

そんな私は東京ディズニーランドの原点に返って、ショーもパレードも気にしないでアトラクションに乗りまくって、買い物して帰る、初期型のゲストに戻るしかないのか。
(身も蓋もなく書くと、最近のTDRのショーはキャラクターに頼りきっておもしろくない、ということなのだ)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

第26回 夢見る頃を過ぎても

「すいーぱーのホームページ」という形でカストーディアルに関するサイトを開設したのは2000年の9月だった。
もともとは仕事でホームページを作成することになったため、練習がてらと文章手習いとしてはじめたもので、どうせ作るのなら、他にはないもの、私が書きやすい題材のもの、ということから「カストーディアル」の話題を中心に、TDRや他のテーマパークの話をおりまぜて作り始めたものだった。
作られては消えていくサイトやブログが多い中、こうして私が今まで続けてこられたのは、カストーディアルに関するネタがまだ尽きないのと(そろそろ危ないか)、更新スピードをマイペースにしていることもあるのですが、一番は多くの方に閲覧いただいていることです。見ている人がある程度いる限りは、ネタもあることだし、続けないといけないか、という使命感に似た思いで、更新を続けているのである。

いったい誰が見ているのか。

想定していた主な閲覧者は、元カストーディアル、元キャストだった。あとは、ディズニーというキーワードを元に訪れる人やときには現役キャストも来るだろう。
そう思って、これまでやってきたわけだ。文章なども、そういった視点で書いている。

ところがである。
ここと「カストーディアルの話」でアンケートをとった結果は、私にとって衝撃的なものだった。(2008年1月5日現在)

「TDRの影を踏んで」
  現役キャスト 40.61%
  元キャスト  22.42%
  キャスト志望 26.67%
  その他    10.30%

「カストーディアルの話」
  現役カスト  36.36%
  元カスト   12.42%
  カストではない
  現役キャスト  8.79%
  カストではない
  元キャスト   5.76%
  どれでもない 20.91%
  キャスト志望 15.76%
    ※現役キャスト45.15%
    ※元キャスト 18.18%

もちろん、みなさん正直にお答えいただいていることが前提ですが、なんと現役の方がどちらも40%強なのである。

サイト、ブログも含めて、元キャストとしての記憶と主観的意見を元に作っているのであり、同じ元キャストが共感と、あるいは追憶をもって見てくれるだろうと思っていたのです。
あるいは、カストーディアルに興味をもった人が、こんな感じでやっているのかと、知るために利用するのだと思っていたのです。

ところが、実際に見ている主な人は現役キャスト……。

「TDRの影を踏んで」は、パーク内でなにげなく存在しているものが、実は特別なものなのだ、とか、一般的に見るとこうなのだ、という意味では参考になる部分もあるのかと思うが、カストーディアルの話については、過去にあったこと、以外は現実にやっていることの話である。あえて一部省略したり書いていないことも含め、わかっている人たち、記憶があいまいになりつつある私よりも詳しい人たちのはずだ。

そういうかたがたはいったい何を目的に訪れるのだろうか。
……などと考えていては更新もままならないので、深くは考えないことにするが(もともと更新頻度はきわめて低いが)

栄枯盛衰というか、ネット上にあるディズニー系のサイトやブログも消えたり現れたり、入れ替わりが激しい。中には現役なのにブログなどを開設して余計なことを書いてしまうしまっている人もいるが、運営会社側に発覚すると大変です。
やるなら、私のように辞めたあとにしたほうがいい(書いてはいけない部分をわきまえた上でね)。でも、そうすると今度はモチベーションが続かないという問題が発生する。
情報を発信し、そして続けるということは本当に大変なことなのだ。
ましてや、現役キャストが満足するような情報があるサイトはどれだけあるのだろうか。
(カストの話はうちくらいしかないので、満足していただくしかないな。満足できないキャストの方、情報ください)

その中で、私が定期購読している数少ないディズニー系サイトがこちら。
  dpost.jp
  Ni-gata Traders
  舞浜狂

どれも長く続いているサイトであり、私のところとは違って頻繁に更新されている、情報豊富なところである。
カストーディアル関係はともかく、ディズニー関係については積極的に情報収集していない私としては、上記のサイトだけ見ていれば十分なのだ。
ほとんどの方は知っていると思うが、知らない方がいましたら、よかったら参照してみてください。
現役キャストの方々にとっても有意義な、あるいは大切な情報も載っているだろう。

東京ディズニーランドも今年で25周年となり、サイトの方も年内に10万ヒットに行きそうな気配です。
キャストをしていた頃の私の記憶はだんだん薄くなり、パークへ遊びに行くことも少なくなって、夢を見ることも忘れつつある。それでも、マイペースですが、もうしばらく続けていく予定ですので、お付き合いください。

……ああ、10周年がつい最近のように思うのに、時の流れは速い。そう思う私もうわさの舞浜年寄りか。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

第25回 なぜお子様ランチを食べたいのか

うちの職場では、上の人たちはいろんな研修に参加するのだが、内部の研修も含めて、我々のような下っ端にはあまりチャンスがない。これでよく今まで働いてこれたものだ。みんな自分自身の経験と自己研鑽のたまものなのだ。
外部で研修を受けた上司が、朝礼のときに自慢げに話したのが次の文章である。あとでプリントアウトしたものも配布したので、長いがあえて引用する。

ディズニーランド内にあるレストランに、ある日30代半ばを過ぎたくらいのご夫婦が来店されました。 接客したのはアルバイトの若い女の子でした。 ご夫婦をテーブルへと案内し、注文を承りました。 先にご主人が注文しました。そして奥さん。最後に奥さんが「お子様ランチをひとつお願いします」と追加されました。 ご夫婦お二人だけです。それに、それぞれご自分の注文が終わった後のことです。 アルバイトの女の子が確認します。 ご主人が答えました。 「ええ、お子様ランチを一つ追加してください。私たちには子供がいました。その子は何よりディズニーランドが大好きでした。一日遊んだあとに、このレストランでお子様ランチを食べるのが、特別の楽しみでした。今日はあの子の誕生日だった日です。いつものとおりお子様ランチをお願いします」 子供用のいすを運び、お子様ランチをだす。誰も座ることがない椅子にはミッキーマウスのカードが添えられていて「いつまでも、お誕生日をお待ちしています」と。

……文章がおかしい。気になる。添削しようとしたが、原文ママで。

それはともかく、この話をした上司は、「この話を紹介したのはホスピタリティの精神をみんなにも、と、思ったわけではなく、純粋に感動したからなので」といって、話を終えた。

上司としては、これを少しは見習えよ、ということをいいたかったのだろうが、ひっかかったのは、このお子様ランチの話だ。

この話は有名だ。私も昔、キャストだった頃に初めて聞いたと思う。ネットで「ディズニーランド お子様ランチ」と検索すれば、かなりの数が現れるだろう。
しかし、上に書いた話は私が知っているものとはまったく違う。ミッキーマウスのカードを、そもそも簡単に用意できるはずがない。なんなんだ、このでたらめな話は……と、思って調べてみた。そうしたら、上記の話の他にいくつかのバリエーションがあることがわかった。

パターン1(もっとも基本的)

登場人物:若い夫婦、バイトの人
話:「今日は、亡くなった私の娘の誕生日なんです。私の体が弱かったせいで、娘は最初の誕生日を迎えることも出来ませんでした。子供がおなかの中にいる時に主人と“3人でこのレストランでお子様ランチを食べようね”って言っていたんですが、それも果たせませんでした。子どもを亡くしてから、しばらくは何もする気力もなく、最近やっと落ち着いて、亡き娘にディズニーランドを見せて三人で食事をしようと思ったものですから…」
キャストの対応:お子様ランチと子供用の椅子を用意。
(このあたりはバリエーションがあって、三人分のお子様ランチを出すとか、テーブルを四人掛けに移したとか)
後日談:なし

パターン2

登場人物:老夫婦、バイトの人
話:昔、自分たちの子どもを亡くしてしまって、子どもはずっとディズニーランドに行きたがっていたから、弔いのために夫婦できました。
キャストの対応:お子様ランチを出した。
後日談:とくになし。

パターン3(1の変形)

登場人物:若夫婦、若い従業員の人、上司
話:パターン1と同じ。
キャストの対応:従業員はマネージャーに事情を説明し、願いをかなえてあげたいといったところ、マネージャーも即座に了承、子供用の椅子とお子様ランチを夫婦に用意した。
後日談:感謝の手紙が届く。文面は多様。

……途中で飽きてしまったので確認作業はやめたが、ちょっと調べただけでも上記のようなパターンが存在する。文体・語り口については、それこそ多様だ。
元に一番近いのは、パターン3であろうと思われる。私が知っている話はこれだ。
この話を最初に広めたのは、堀さんという元関係者で今はコンサルタントをしている人のようだ。その後、いろいろな人が話を変え、より感動的に、よりわかりやすく語っていくうちに、このように無数のバリエーションが生まれたものだ。
つまり、このお子様ランチの話はすでに都市伝説なのである。今となっては、本当にあった話なのかさえ、わからない。東京ディズニーランド開園5周年前後の話で、場所はワールドバザールの某レストランだと言われているが、公式的に語られたものではなく、確証は何もない。

だが、この話は語り継がれ、いい話として流布し続ける。事実かどうか、今のディズニーランドは「お子様ランチ」ではなく「お子様メニュー」だ、ということも含め、関係ないのだ。人々はいい話が好きなのである。

さて、この話だが元々は「いい話」として語られたものではない。コンサルタントがホスピタリティーについて話すときによく使われるものだった。

キャストの行動は、お子様ランチは大人には売れないというマニュアルには反するが、お客様のために正しい行動をした。ホスピタリティーを考える上で、マニュアルではなく、マインドが大切なのだ。

……という話だと思ったのなら、あるいはコンサルタントや講師でそう説明した人がいたとしたら、それは間違いである。

この話は、キャストは一見マニュアルどおりに行動しなかった、決まりを破ったように見えるが、実はキャストの行動はディズニーランドの基本理念、目的どおりのものであり、大きな意味でマニュアルどおりに行動したのだ。
ディズニーランドでは食事を提供するのではなく、食事を通じて夢や感動を提供する、楽しんでもらうことが目的なのである。表面的なマニュアルではなく、その根底にある理念や目的をキャストも上司も理解していたからこその「当然の行動」だったのだ。だからこそ、キャストは独断ではなくきちんと上司に相談し、許可を得て行動しているのである。
(そういう描写のない話もありますが、それこそ、この話を理解していない人が広めたものでしょう)
それに対して、後日ゲストから感謝の手紙が届く。そういう手紙はすべての部署に回覧され、キャストの行動を称賛する。称賛することで、会社がどのようなことを期待しているのか、教育するよい機会にもなる。そして、よい行動をきちんと賞賛することで、従業員のモチベーションアップにもつながるのである。

本来、このお子様ランチの話は、そういったことを説明するための事例なのだ、と私は理解している。
そういう意味では、この話が事実がどうかは関係なく、マニュアルや従業員教育の大切さを理解するための事例としては、よいお話だろう。

……と、上司に説明してあげようかとも思ったが、やめた。ホスピタリティーだとか、従業員教育という意味をそもそも理解していない方に、こんな話をしても無駄だろうから。
そういう人には単なるいい話で十分さ。

でも、同じようにやれ、と部下に期待されても困るけどね。

(今回の話をもっと感動的に書け、といわれたら、書くこともできるけど、そういう趣旨の文章ではないので、あえてあっさりと書きました)

追記:私もお子様ランチを食べたいとディズニーランドの某レストランで言ったことがある。そのときキャストはにこやかに、
「うーん、もっと小さくならないといけませんね」
と答え、私も「そうですねー」と笑いあったのでした。
(言ってはならないことだが、場所によってはお子様メニューの方がおいしそうなのです)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

«第24回 舞浜までいかなくても、魔法は存在する