あのテーマパーク運営会社の株式が公開され、つい購入したまま、今も持ち続けている。パークの変容を目の当たりにして、運営会社の姿勢にすっかり失望している今、株式を持ち続けても仕方がないのだけれど、このまま売ったら大損なので持ち続けているにすぎない。ミート・ザ・ワールドがあった頃は、「いったいどうするつもりなのだ」という心配から、毎年のように株主総会に参加したこともあったが、今はもう、その心配もなくなってしまった。
おまけに、あの会社の株主総会は独特な雰囲気で、どうもなじめない。まるで、ファンクラブの集会のようなのだ。
それに、幕張まで行く気力がないため、最近はまったく行っていなかったのだが、今回たまたま休みが合ったことと、ちょっと興味がある事項もあったので、ひさしぶりに参加してみたのだ。
……内容も雰囲気もあまり変わっていなかった。そもそも、参加者の多数と開催者側に大きな認識の隔たりがある。それが広がっているようにも思えた。それはあとで書くとして……。
前半は報告事項。すてきな映像とあいまいなナレーションで「ごまかしているな」と感じた部分もあったが、いつものとおりつつがなく終了。メインは採決前の質問の時間だ。
Q.「CO2削減のために何か実施していないのか」
A.「ホームページでも公開しているが、いろいろと環境に配慮している。CO2を出にくい素材を使うとか、コージェネ使うとか。ソーラー発電も実験している最中で、実用化できるようであれば使う」
※あれ、あそこのピザ屋の屋上にあるのはたしか……。
Q.「海外への進出は考えているのか」
A.「いろいろと検討しているが、この場での回答は控えさせてほしい」
※D社とは関係なく、という方向みたいだが、だから話がまとまんないんだな。
Q.「大都市に作る予定の屋内テーマパークはダウンタウンディズニーにあるものか」
A.「フロリダのダウンタウンディズニーにあるディズニー・クエストではない。もっと違うものを検討している」
※個人的にはディズニークエスト好きなんだけどな。
Q.「最近、セミナーのようなことをいろいろとやっているが、日本でディズニーインスティチュートを行なうつもりなのか」
A.「ここ数年、ディズニーアカデミーという形でセミナーを開催している。ディズニーインスティチュートについては昨年は別の会社で開催したが、それとは趣旨が違う。今回はテストケースとして将来的にはディズニーインスティチュートを行なう方向で考えたい。そのときには、バックステージツアーなども実施することを検討する」
※総会の報告では一言も触れなかったが、回答からすると、けっこう話は進んでいるな。でも、今のところ、集客に困っているようなことも口走っていたけれど。
興味深い話はそれくらいで、あとはもう……いつものとおりだった。
さて、この株主総会に来た人たちの多数と開催者側の意識の違いは、この質問によって明らかになった。
「子供連れもいるとおり、ここに来た株主の多くはキャラクターに会えるかもしれないと思ってきたのだ。それくらいできないのか」
それに対する会社の回答は明快だった。
「いわゆる懇親会のようなものを指しているのだろうが、弊社では株主総会を法令に基づいた重要な経営事項の審議決定機関と位置付けている。法令も基づき、今後も開催していく」
ということだった。娯楽産業の会社がなんで?サン○オの総会とはぜんぜん違う……といった声があちこちから聞こえた。この運営会社は冷然とした、大手不動産会社と大手私鉄によって設立された日本的な会社なのだ。取締役をひな壇にあげて、社員株主を一番前に座らせ、つつがない議事進行をすすめる、よくある会社なのだ。(それにはいろいろと理由もあるのですが、ここでは書けないけどね)
もう一ついえば、キャラクターグリーティングについて、
「契約でキャラクターの利用はテーマパーク運営に関することについてのみとなっている。株主総会は弊社の経営に関する事項であり、今後もそれはない」
運営会社側の回答は正しい。株主総会の運営方法も正しい。法的、企業的にはね。私もそれでいいとは思う。
だが、ここに来ている株主たちの多くはそう思っていない。この株主総会にも夢と魔法があると思って……あるいは信じて来ているのだ。エンターテイメントの企業なのだから、何かがあると思っているのだ。
ここに大きなギャップがある。
運営会社のいうとおり、株主総会は「法令に基づいた重要な経営事項の審議決定機関」としたいからなのだ。余計なことをして問題は起こしたくないのだ。パークのクレームや貴重なご意見を拝聴する場にはしたくないのだ。
何か、特別なことをすれば、それを目当てにますます「ファン」が訪れてしまうだろう。質疑応答では、株主総会であることを度外視して、本来ゲストの立場で直接クレームや意見として直接キャストや会社の窓口でいうべきことを、偉い人がいるというだけで、株主総会で直接訴えようとする人が増えてしまう。経営なんてどうでもいい、もっと客……いや私たちの要求に答えろ、と。株主なんだから優遇しろと。
そうでなければ、株主用のファストパスを配布しろなどいう意見は出ないはずだ。株主のために年間パスポートの代金を優遇しろという意見もそうだ。それを使う姿を見た大多数の一般ゲストはどう思うかなど考えないのだ。それが経営に与える影響など、関係ないのだ。
私だって、パーク運営に関する不満はたくさんある。事情を知った上で指摘したいことや意見もある。だが、それはゲストとしての視点であって、あるいは元キャストとしての視点であって、株主としての視点ではない。イコールだと思っている人がいるから、あんな質問が多数出るのだろうが、寝る場所を作ったり、株主のための特別待遇を作ることで、会社や株主に最終的にどんな利益があるというのだろう。それで利益が増えて配当が増え、株価が上がるのか。企業価値があがると信じているのか。わざわざ株主総会で主張しないといけない事項なのか。一般ゲストとして手紙や電話では意見を聞いてくれないと思っているのか。もし、突きつけた意見が通らなかったとしたら、その意見自体に問題はないのか、とは思わないのか。キャストに訴えたり、お客様相談室に言っても無駄だと思っているのだろうか。(だと思っているから、クレームを述べる人もいるのでしょう)
そんな会社の株をなぜ持っているのでしょう?(私のように売れないからか)
株主総会で偉い人に訴えればなんとかしてくれる、みたいな光景など見たくはないのだ。
クレームや貴重な意見はお客様相談室にでも伝えてほしい。きちんとした意見やクレームなら、必ず実現する……かどうかはわからないけれど、ちゃんと意見を取り入れるシステムは整っている。それだけは、おそらく日本有数である。
そういう意味では、今後とも粛々とした株主総会を目指してほしいものだ。株主総会で言ったことが実現した、みたいなことは、見たくないものだ。もし、株主の意見で何かが変わった、ということがあったら、あのテーマパークも地に堕ちた、としかいいようがない。
ただ、会社が主張するとおり粛々とした株主総会を開催し続けるつもりなら、今後のテーマパーク運営についてや、運営の理念、あるいは新たに展開する事業について、もっと夢を語ってほしいし、魔法をみせてほしい。冒険してほしいし、イマジネーションを披露してほしい。株主総会では、夢が語られない。企業理念や、実際に運営しているテーマパークとはかけ離れた総会だ。そういう意味での夢や魔法を見せてほしいものである。
今のままでは開催者も個人株主も中途半端だ。ファンクラブの集いと思って参加する人たちと、つつがなく議事進行をして無難に終わらせようとする会社側。このギャップを埋めないまま、今後も毎年開催されていくのだろう。上記のような理由で。
それとも、運営会社が心を入れ替えて、テーマパークについてのささやかな意見やクレームが山のように出てくることも覚悟して、いや、ちゃんと受け止めるつもりで、ファンクラブの集いのような総会や懇親会を開く日が来るだろうか。個人株主のほとんどは運営会社のファンではなく、テーマパークのファンであるという事実を運営会社がきちんと受け入れる日が来るだろうか。個人株主が特別なテーマパークの顧客であることを自覚し、特別なサービスを提供しようと思う日が来るだろうか。(今の状況では、それはないな)
どちらにしても、ファンクラブの人たちによる運営会社側への要望やクレームを聞くために、あるいは、運営会社の言い訳とつつがなくやりすごそうという態度を見るために、毎年わざわざ幕張まで行くことはしばらくしないだろう。
自分が職場でお客様から受けている要求やクレームに対応する姿を思い出して、つい心情的に運営会社の味方になってしまうから。
「お前じゃ、話にならん。社長をだせ」みたいな話は、目の前の現実だけで十分なのだ。
※かしこいファン株主は、会場でもらえるこのお食事券を受け取ったら、株主総会なんて見ないでさっさと帰るんですよね。私はこれだけでは交通費の元もとれないので、ちゃんと話は聞きますが。