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茶色いごみ袋

カストーディアルキャストのポケットに茶色のごみ袋がつまっている姿を見たことがあるだろうか。主にダンプ(ごみ回収)のキャストがポケットに入れていることが多い。
茶色のごみ袋(本当は名前があるけれど、今回はあえてごみ袋と呼びます)についての話をする。

東京ディズニーリゾート内にあるトラッシュカンはさまざまな形とペイントでテーマパークにふさわしく、風景に溶け込んだ存在である。その中には、ごみ箱があり、ごみ袋がかけられている。通常、ごみ袋は一枚かけることになっているが、実際は二枚掛けが基本となっている。

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なぜ、二枚もかけるのか。それはスムーズにごみを回収する知恵なのである。
通常、回収用のカートにごみ箱をひっくりかえして入れる。しかし、混雑していると、そんな大きな動作をするのはゲストに迷惑である。また、ほかのトラッシュカンも含めてあふれそうな場合、短時間にごみを回収しなければならない。ごみがいっぱい入っているときは、ごみ箱をひっくり返すのも困難である。
そんなとき、ごみの入っているごみ袋を外して、そのまま回収用カートに入れれば、短時間でスムーズに回収することができるのだ。
そして、すばやく、再びごみ袋をかけて二重にする。
万が一回収している最中にゲストがごみを捨てても、もう一枚ごみ袋がかかっているので、ごみ箱自体が汚れることもない。

それなら、開園前に何重にもごみ袋を掛けておけば、ごみ袋をかけ直す必要もなく、ただひたすらごみの入った袋を回収していけばよいのだから、楽ではないか。実際、一部のエリアでは一〇枚くらい掛けているところもある。しかし、基本的にはバッドショーということになっている。

一つには、本来はごみ袋を使わないのが基本だからである。アメリカのディズニーのパークでは、ごみ袋をかけていないか、かけていても、一枚がけである。ディズニーのテーマパークでは、ごみ箱の中身も含めて、ごみがないことが普通(スタンダード)なのである。それを維持管理することが、カストーディアルの重要な仕事なのだ。ごみ袋も見栄えはそれほどよいものでもない。いや、それ自体がごみになってしまうものである。だから、なるべくごみ袋は使わない。何もかけていないごみ箱からごみを回収して、雑巾と洗剤できれいして戻す。それが本来の基本的なダンプの作業なのだ。

……とはいっても、大量のごみが発生し、回収するキャストが少ないという現状では、ごみ袋をかけざるをえない。それも、スムーズな対応をするために二枚がけが行なわれているのである。

昔……平日で入場者が本当に少ない頃は、東京ディズニーランドでも、一枚がけや、何もかけないでいるときもあったのだ。

もう一つの理由は、すばやくごみを回収して、颯爽とごみ袋をかける動作が一つのショーとなっていることである。
効率だけ考えれば、何枚もごみ袋をかけて、ごみが溜まったら袋を外して回収だけでいいだろう。しかし、それでは、単に溜まったごみを回収するのは、単なる掃除の人である。少なくとも、カストーディアルは、単なる掃除の人ではないはずだ。

ダンプの技といえば、ごみ袋の空気抜きである。……これは人によって、エリアによって違うので、一例ということで。

少し空気を入れたごみ袋を、底の四つ角につくよう置く。
上部の四つ角のうち三つ角にごみ袋をかける。
空気ができるだけぬけるように手でごみはこの内側にごみ袋が密着するように抑える。
ごみ袋の口の方を一部結んで、ごみ箱の残った角にひっかける。そのとき結び目は、トラッシュカンへ入れるときに邪魔にならないような場所にくるようにする。結び方がゆるいと、ごみがたくさん入ったときに外れてしまうので、注意。
それから、さらに軽くごみ袋とごみ箱が密着するようになでて、空気をなるべく逃がす。

私がいたランドでは、ごみ袋をかけたあとに、上部に小さい穴を開けるのが主流となっていた。昔は、常備していたステンレスのガムスクレーパーで、それがなくなったあとは、指やペンなどで穴を開けた。空気を逃すための穴である。
個人的には、そこから大きく破れることもあるし、ごみが満杯になったとき、その穴から下のごみ袋に液体などが漏れるので、このやり方は反対であったが。

もう一つは空気を入れた別のごみ袋をごみ箱に押し込んで、空気を抜くという方法もある。その応用技として、ごみの入ったごみ袋を使うという技もあるが、見た目は良くないので、お勧めしない。

……空気抜きについては、ごみの重さで空気は抜けるのだから、そんなにこだわらなくてもよいのではないかと私は思うのだが(現役のときから、そう主張していたが、少数派だった)、そんなごみ回収の仕事の細かいところにもこだわりをもつのは、やっぱりカストーディアルらしい一つのエピソードではないだろうか。

この茶色いごみ袋は、ごみを入れる袋のほかにも、本来オンステージで持ち運ぶとあまりよくないものを入れて持ち運ぶのに使ったり、いろいろな使われ方をしているのだが、それはバックステージの話なので、ここでは省略。

……スイーピングは、キャストを引退した今となっては、もうやる機会もほとんどないが、ごみ袋を張る機会がときどきある。シュレッダーにごみ袋をかけるときだ。このときは、今もカストだった当時の、すばやい手際で取り替えるので、まわりから重宝されている。好きでやっているんだけれど、もしかしたら、私はいいように使われているだけなのかもしれないが。

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