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幻のスクイジー先導

カストーディアルにとって残水対応といえば、「スクイジー(フロア・スクイジー)」を思い出す人が多いだろう。しかし、そのスクイジーを使って、パレードの先導をしていたことはあまり知られていない。
これは、まだパレードを見るために何時間も前から場所取りするような起きていなかった当時の話である。具体的に言うと、ディズニー・クラシックス・オン・パレードを行なっていた頃、だいたい、TDL開園7年目くらいまでのことであろうか。

パレード開始直前、雨が止むというのは、よくある話である。キャストの間では、そういうことが起こると「ディズニー・マジックが起きた」と言う。どうせ雨だからと、パレード対応の準備をしていなかったキャストは大騒ぎになる。

パレードは、舞浜のピンポイント気象情報などを参考にしながら、直前まで、中止か実施かの判断を保留される。5分前でも雨が止むらしいということになれば、基本的に実施するのである。また、雲行きの状況によって、パレードを5分か10分早め、スピードも速めにして実施してしまう場合もある。
そういう状況下、パレード強行となれば、カストーディアルも全力を挙げて、濡れたパレードルートをスクイジーを使って残水処理をしようとするが、間に合わない場合もある。また、小雨が降っている中、強行することもある。
そんなとき、パレードの先頭に立って、スクイジーを持ったスイーパーが残水処理をしながら、パレードを先導をしていたのだ。

通常パレード先導は、ファンタジーランド所属とウェスタンランド所属のカスト1人ずつ、2人で行なうのだが、スクイジー先導の場合は、6人、すべてウェスタンランドのカストーディアルで行なっていた。通常のパレード先導では、たとえ小雨が降っていても雨具なしで行なうのだが、スクイジー先導の場合は、雨具・・・レインギアと呼ばれる合羽を着て行なった。

基本パターンとしては、パレード出発地点からウェスタンランドとプラザをつなぐ橋までをウェスタンランドのカスト、プラザはワールドバザールのカスト、シンデレラ城横、プラザとトゥモローランドをつなく橋から最後までをトゥモローランドのカストがスクイジーでつなぐ形をとっていた。
ただ、たまに、ウェスタンランドのカストが最後までスクイジー先導を続ける場合もあった。ウェスタンランド境までいって、さがろうとしたら「最後までいってね」と、その場所で待っている社員に指示されることもあったのだ。

スクイジー先導を行なっていたのは、濡れた地面はバッドショーだということ、ダンサーなどが足を滑らせる可能性があること、などの理由であった。

スクイジー先導は、しょっちゅうあるものではなかった。年に10回もなかったと思う。基本的にはパレード前に残水処理が終わっていればいらないわけだし、雨の中パレードを実施することもあまりなかったからである。

ここまでの話を読んで、おやっと、思った人はいるだろうか。

それは、昔のパレードの様子を知らないカスト、元カストの人はおやっと思うだろう。「残水処理したときの水はどこへ流れていくの?」

TDLの地面はだいたい微妙な角度がついている。雨が降ったとき、水がうまく排水溝に流れるようにしているのである。スクイジーは地面をなでることによって水を切り、高いところから低いところへ水を流すための道具で、排水の手助けをしているわけだ。
パレードを先導する形でスクイジーをかけていくということは、切った水はどこへいくのか。そう、すべてパレードルートの両サイドへ流していくのである。つまり、パレードを見ているゲストのいるところへ。

おいおい、シートをひいて座っているゲストがびしょぬれになってしまうじゃないか。ゲストコンプレインの嵐だぁぁ。

今ならそうなるだろう。

だが、スクイジー先導が行なわれていた頃は、シートを敷いてパレードを待つようなゲストはいなかったのだ。プラザにはいたようだけど、わざわざ待ってまでパレードを待つゲストなどいなかった。パレードが始まって、やっと人が集まり始めるような感じだったのだ。
……今では信じられないが。

だから、パレードが始まる30分前になると、アトラクションキャストやゲスコンのキャストがパレードルート全体にロープを張って、パレードルートとそれ以外の部分を区別しないといけなかったくらいである。
個人的にはこのころが一番、よかったと思う。アメリカのディズニーのパークは今もみんなこんなのどかな感じなのだ。朝からパレードの場所取りをするようなゲストなんて、いなかった……・。

話はずれたが、そういうわけで、スクイジー先導をして、雨水をゲストのいる方向へ流しても問題はなかったのだ。雨の日など、とくに、パレードを見るゲストになんて、まばらだったのだから(今では夢のような光景だが)

しかし、当時スクイジー先導をしながら思ったものである。いいのかなぁ、ゲストコンプレインこないのかなぁ、と。
いくらパレードを見るゲストがまばらだといっても、立って見ている人はいるのである。6人のスクイジーでパレードルートの残水処理をしたら、かなりの「きたない」水がゲストのいる方向へ流れていくのである。「足下にご注意ください」と何度も大声をあげながら、進んでいくのだが、だいたいのゲストはスクイジーから発生した雨水の波をまともに被って、くつはびしょぬれになっていた。

そして、だんだん、パレードを見るゲストが増えてきた。休みの日などは、シートを敷いて、座り込んでいるゲストも現れるようになった。そんな中でのスクイジー先導である。「足下ご注意ください」といったが、座り込んでいる人には意味のない注意である。
あーあ、悪いなぁ、と思いつつ、上からの命令でやれというから仕方ないのだ、と心の中で謝りながら、スクイジー先導をしたこともあった。

それからしばらくして、スクイジー先導は中止となった。

おそらく、クレームになったのだろう。
たしかに、たくさんのゲストが座り込んでいるところに、きたない雨水を流し込むわけにはいかない。

これは、パレード前のパレードルートの残水処理にも大きな課題を残す形となった。

カストーディアルの埋もれた歴史の一つである。

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