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休園日

今はもうなくなってしまったが、東京ディズニーランドには「休園日」というものがあった。これは、ワールドバザールが旧大規模小売店舗法でいう「大規模店舗」に該当したため、営業時間に制限が加えられたからである。
今もあるかどうかはちょっと確認していないが、ワールドバザールの一角に目立たないように小さく、大店法が適用される旨のプレートが掲げられていた。この法律によって、年間10日ほど休まなければならない、とか、営業時間が短い日を何日も設けなければならないなどの制限があったのだ。
今は法律が改正されてそれらの規制はなくなり、営業時間は基本的に自由に設定できるようになり、毎日夜のパレードが実施できるようになったり、休園日を作る必要がなくなったのだ。イクスピアリもこの法律がなくなったから建設できたようなものである。
今回は、今はなき休園日におけるカストーディアルの活動を記したいと思う。

休園日は舞浜駅のゲートウェイには鎖がかけられ、そのまえにはキャストが立って、知らずに来たゲストに対して「今日はお休み」だといって、追い返していた。この日、キャストはあまり出勤しない。出勤しているのは基本的にメンテナンス関係のキャストだけである。休園日は普段行なえないことをするには大切な日だったのだ。
カストーディアルの場合、休みの日もあったが、基本的には休園日作業が入った。営業中はなかなか手の届かない部分を清掃するのにはちょうどよいのだ。主に平日契約のキャストがその仕事にあたった。もちろん休園日が平日だから、ということもあるが、専業で働いている人への賃金の確保という面もあったようである。

作業はUTT(ユーティリティー)作業の延長である。UTT作業とは、通常とは違ういろいろな掃除の作業、とでもいえばいいのだろうか。カスト関係の人にはわかると思うので、解説は省略。

休園日に行なうUTT作業は

主に外灯などの細かい部分の掃除。
バッシングが入っている店内にある装飾の金具などを磨く。
レストルームの洗面台の下を開けて掃除する。
建物外壁の柱の陰などふだん手の届かない部分のホコリを拭き取る。
ウェスタンランドでは、毎日ホージングできないトムソーヤ島で散水して地面を掃除する。
その他、ふだん掃除をしていないところを処置する。
もちろん、ナイト・カストーディアルが閉園後、毎日細かく掃除をしているのだが、それでもなかなか手の届かないところがある。そういったところを休園日に掃除するわけである。

いつもとは違い、音楽もなく、ゲストもいない、キャストもほとんどいないエリアはとても広く感じる。店の扉もアトラクションの入口もすべて閉められ、ポップコーンワゴンも静かに佇んでいて、その中を資器材を持ちながら歩いていると、なんだかとても寂しい。ディズニーランドにいるはずなのに、なんだか違うところにいるようである。

だいたい休園日は寒い季節に設定されているので、冷たい風が吹きつけ震えながら、外灯に梯子を立てかけて、一人が押さえ、一人はヘルメットをつけて慎重にカサを外しながら磨いていく。高所作業では必ずそうしなければならないことになっているのだ。
レストルームは、ゲストが入ってくる心配がないので、安心して掃除することができる。洗面台の下の板を外してみると、すごいことになっているので、これも慎重に拭いていく。
そうして、陽暮れ近くまでエリア内の細かいところの清掃や、バックステージのストレッジ(カストの控え場所)の整理整頓・清掃などを行なって、休園日の勤務は終了となる。

休園日がなくなったあと、それらの作業は、ナイトカストーディアルや開園中の作業の中に組み込まれていったようである。

ほかに休園日には年に一度、「スイーピング大会」をショーベースで行なっていた。これは、各ランドの代表がスイーピングの妙技を競い合うものである。最初はスイーピングだけだったが、そのうち拭きあげなど、カストーディアルとしてのさまざまな作業を組み合わせて競うものになった。休園日がなくなったあとは、開園前に行なっているようである。

そういえば、NKホールで行なっている春のサテライトも、当時は休園日に開催されていて、社員が総出で面接などにあたっていた。

休園日はゲストにとって迷惑な存在だった。舞浜駅に降り立ってみたら、TDLへと続くゲートウェイの入口にはロープが張られて通れないようになっていて途方に暮れるゲストをよく見かけたものである。CMや新聞広告でも休園日のことは頻繁に告知していたのだが、来てしまうゲストはいるわけで、出勤するキャストは申し訳なさそうに、ゲートウェイ入口に立っているセキュリティーにIDを見せて、TDLへ向かったものだ。
今は休園日がなくなったので、ゲストは安心して遊びにいけるわけだ(入場制限にひっかからなければ)

一方で、あの寂しい静かな日中のディズニーランドをキャストが味わうことはなくなってしまったわけである。仕事をしているときは、はっきりいってつまらなかったが、今にして思えば貴重な経験だったのだと思う。

休園日、オンステージでみんな大きな声で歌いながら仕事をしていたのが、懐かしい。

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